僕をよろしく | ナノ



僕をよろしく
09






 何度呼びかけても佐古の身体は動かなかった。



「あーあ、折角だったのに飛んだら面白くねぇじゃねーか」

 僕の傍で聞こえる声に、怒りか嫌悪か鳥肌が立った。
肩をつかまれていた僕は佐古に近寄る事も出来ず、ただもがいて抵抗するしかなくて・・・。

「そいつが相手してくれんじゃないの」

「俺だって相手は選ぶって・・・こんなヤツ」

 ぐいっと顎を持ち上げられて、息が詰まる。

「―・・・っ」

 ニヤリと笑うと、僕を佐古の傍に居た二人に突き出した。
 そのままもつれるように前に出ると、一人が僕のシャツを引き、人目を避けるかのように植木の陰に隠れると、地面に倒された。

 伸びてきた腕に殴られる、と目を瞑ったのにその手はそのままシャツに掛かり引き裂かれた。飛んだボタンに一瞬だけ初めて森岡と会った日のことを思い出した。

 乱暴な・・・と言うのはこういうことを言うんだ。あの時の森岡はシャツを裂いた割には優しかったんだと気付く。
 こんな恐怖をあの時は感じなかった・・・。

「やっ!」

「くっそ、おとなしくしてろ」

 パン、っと軽い音が鳴って、僕の頬がジンジンと熱を帯びてくる。

「痛い目見たくないだろ?それともそっちがお望みか?」

 殴られ、蹴られる方がマシだ―・・・


 伸ばされた手に身をすくませてみても、相手はお構いなしに僕の手足を拘束する。三人が相手となると僕の抵抗なんて何の意味も成さなくて―・・・。

「や、やめて、くださ・・・」


 肌に触れる手の感触が気持悪かった。

 どこかに隙が出来ればどうにかして助かるかもしれないと、何度も頭で考えてみたけど・・・。

「勃つのかよ」

「微妙だな」

「俺はいけるな、俺からいくか」


 そんな会話さえぼやけて聞こえてきた頃、身体を反転させられ目の前に土と雑草が広がった。


「バックならいける、か。」


 クスクスと笑う声が僕に落ちてくる。

 手が、僕のベルトに掛かった頃には


 諦めなくてはいけないのかと、ますます視界が霞んでいく気さえして、抵抗する気力も消えうせていく。


 今までにない恐怖感にいつもなら逃避できる“感覚”さえ研ぎ澄まされていくようだった。

 何度も口を付きそうな言葉。

 今まで何度も諦めてきたのに、やっぱりこんな時には求めてしまうんだ。


 “助けて”と、誰かを。


 「ふ、ぅっ」


 無駄だ―・・・と僕が笑いかけていた。

 
 その笑い声が僕に手を伸ばす3人の先輩と重なった。僕に触れていく先輩達の指先に、何度も出そうになる言葉を噛み砕くように歯を食いしばるしかなかった。


「・・・いきなり入れちまうか」

「―・・・っ、やっ!」

 腰を力強くつかまれ、腰から下が地面から浮き上がった。





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