僕をよろしく | ナノ
僕をよろしく
08
階段を下りて、外へ出た所で走るスピードを緩めた。
――押し倒された佐古
先輩の手が佐古のシャツに掛かり
佐古の声を抑えるように後ろに立つ先輩の手が佐古の口を塞いで・・・・
それを見て、衝動的に駆け出した。
けど、本当に僕が助けることが出来る?
どう見たって佐古にとっての危機だって、分かっているのに・・・・こんなところで怖気づいてる僕。
きゅっと目を瞑ればまた先ほどの佐古の姿が思い浮かんで。
そして手を握り締めると、また足を前にだした。
たとえ・・・佐古を助ける事で僕が殴られたって―・・・僕なら大丈夫。佐古よりも、絶対痛みに強いから。
それよりも今、佐古を助けなければ・・・あの先佐古の身に起こることは・・・・
絶対傷つくから・・・・
許してない人に身体を、なんて―・・・
きっと森岡だって、そんな事で傷ついた佐古を見たくなんてないはずだから。
そこからはもう、無心で佐古の居るであろう茂みへと足を運んだ。必要以上に足音を、草を掻き分ける音を立たせながら。先輩達が物音に気付いて去ってくれればって、そんなことを思いながら。
くぐもった声が聞こえ、そこには佐古を取り囲む姿が。
佐古のシャツがはだけて、そしてその肌に顔を寄せる先輩の姿。外されたベルト、口を塞ぐ手、足を掴む手・・・・
「チッ・・・なんだよ、邪魔すんな」
一人が僕に気付いてそんな言葉を洩らした。
それに続いて佐古の身体から顔を上げた人が僕を見てニヤリと笑いかけてきた。
「よぉ、こないだ駅前でも邪魔した奴じゃねぇか。今日も救世主気取りなのか?」
「―・・・た、じまっ!」
見上げた佐古の瞳には涙が溜まっていた。
「ダメ・・・です、先輩。佐古を・・・離してください」
ドクドクと鳴る心臓を何とか押さえ込みながら、話しかける。けれど、先輩達はニヤニヤと笑うばかりで佐古から離れる気配すらない。
「はいはい、お子様は見ちゃダメだよ。・・・帰りな」
「佐古を離して下さい」
「うるせーよ。邪魔だってんだろっ」
佐古を押さえていた一人が立ち上がりこっちへ向かってくるのが分かり、思わず身をすくませる。
「・・・っ」
先輩が僕の肩を掴み、そのまま勢いよく押し返せば、簡単に僕の身体は地面へと沈み込む。地面に着いた手を握り締めて、先輩を見上げる。
「痛い目見る前に去れよ」
僕なんかじゃ・・・佐古を助けられないのかもしれない。
「嫌、です」
それでも。
「あぁ?」
立ち上がると、少しでも佐古から引き離したいと先輩のシャツを引っ張った。
振り上げた先輩の腕が僕の腕を払い、そして頬へと伸びてきて、鈍い痛みが走った。
「つぅ―・・・」
ジワリと広がる痛みと、口に広がる鉄の味。
「いい加減にしろよ。見逃してやるつってんだから今のうちに逃げとけよ」
「・・・佐古を、離して下さいッ」
また、先輩にしがみつくと佐古を襲う途中で手を止めていた先輩が立ち上がったのが見えた。
「うぜぇな。さっさとやっちまえよ、気が散る・・・っ!」
「は、なせっ!」
先輩が離れたのを見て、捕らえられていた佐古が大きく暴れだした。その足が先輩に当たって一瞬よろめいたのに、大したダメージにはなっていなかった。
「ちっ、大人しくしとけばいいものを・・・」
「誰がっ・・・大人しくやられるか!」
抵抗する佐古に向けられたのは先輩が大きく振り上げた足。
鈍い音と、佐古の唸る声とが聞こえ、佐古の身体がくたりと地面に転がった。
「――佐古っ!」
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