僕をよろしく | ナノ



僕をよろしく
02





 新しい気持を抱えて迎えた新学期。

 さっきまで浮かれた気持でいたのに、それはあっけなく萎んでしまった。自分のクラスに足を踏み入れて、直ぐに感じたクラスの雰囲気。

 皆がすでに友達のように話し合い、すでにグループに分かれて集まっていた。一体どういうことなのか、と不思議に思いつつも、自分の席に着いてすぐ隣に居た3人のクラスメイトに声を掛けられた。

 第一声が「外部者?」という言葉に、僕が疑問をぶつけると、その中の一人が詳しく学校のことを教えてくれた。

 この学校に通う生徒は皆同じ中学から上がってくるという事。提携を結んでいる一貫校らしく、他所から来る生徒と言うのはとても珍しい事のようだった。

 そんな話しを聞いて僕は愕然とした。全てはちゃんと調べていなかった僕も悪い事なのだけど、こんなことなら別の学校を探していたのに。ちゃんと友達が出来るのか・・・という一抹の不安がよぎった。

 この時だって折角声を掛けてくれたチャンスを、気が動転した僕は何一つ気の効いたことも言えず、置かれた現状に焦り黙り込んでしまい、親しくなることは出来なかった。






 しばらくして、担任が教室に姿を現すと直ぐに自己紹介が始まった。が、殆どが顔見知りだからだろう、自己紹介を聞く者も、ちゃんとした紹介をするものも少なくて、ざわついた教室の中で僕だけが置いていかれている感覚だった。

 始業式を体育館で行うという担任からの連絡事項が済むとしばらくの空いた時間に、また教室は各々が話しを始めて騒がしくなった。僕は誰かに声を掛けることも難しくて、結局一足先に体育館へと足を運ぶことにした。


 昨晩の意気込みはどこへいったのだろうか。
 小さくため息をついて、長い廊下の先を見やる。
 どの教室も、廊下に出ている数名の生徒も皆、緊張のカケラもない。
 僕一人が浮いている気がした。

 入寮も、ギリギリの昨日だった事もあり、1日中慌しく部屋の片付けをしていた。もう少し早めに入っていれば、せめて同室の人とくらい仲良くなれていたかもしれないのに…。同室の人は昨日部屋には戻ってこなかった様で、僕はまだ顔さえ知らない。
 せめて一言二言、言葉を交わしていれば学校の事とか雰囲気とか教えてもらえたかもしれないのに。そうすれば、僕だって少しは心の準備が出来たはずだろう。


 この学校は裕福な家庭層が多いから・・・お金目当てで僕に寄って来る様な人は居ないはずだ。そんな事に安心できる反面・・・何の魅力もない僕に一体誰が近寄るだろうか?


 目元に掛かる、真っ黒な自分の前髪を弄りながら、僕は大きなため息をついた。





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