僕をよろしく | ナノ
僕をよろしく
12
しゃべっては だめ
ないても だめ
しずかにしなくちゃ
おりこうさんにしてなくちゃ
また、いたいことされるから
もうちょっとだけ、ガマンしておけば
だいじょーぶなんだよ
◇
―――・・・
見上げた天井は何も変わっていなかった。
指先に力を入れて、自分の感覚を確かめて・・・
「・・・いたい・・・・」
痛くないわけない。
わかっている、知っている。
いくら意識を切り離した所で体についた傷や痛みは消えるわけでもない。切り離せるのは“その時だけだと、わかっている。
それでも痛いと声に出さない事で
痛みを顔に出さない事で
早く開放されるから
僕にできる唯一のことだから
「・・・・痛い・・・なぁ」
腕を動かしてお腹をさする。
寝転がったままの状態で、小さく体をくの字に丸めて痛みに耐える。
「気にくわないんだよ」と佐古の声が耳に響く。
もう会長とあんな事にはならないのだから、佐古だってそのうち飽きるだろう。しばらく我慢をすればいい。
こうやってやり過ごせばまた平穏が訪れるはず・・・だから。
こんなこといつまでも続く事じゃない。
そう思って・・・・いつも耐えてたんだけど。
やっぱり僕はこんな運命なのかな?
いつまで、こんな僕なのかな?
ずっと、自分を切り離しては「必ず終わりがやってくるから」と自分を励ましていかなくちゃいけないのかな?
「・・・・。」
痛みを押しやって、無理やり体を立てて制服についた埃を掃う。時間を見ると昼前だった。
今日は昼からの授業だって、明日だって体育はなかったはず、それがちょっと救いかも・・・。こんな体では上手く動かす事ができなさそうだから・・・。
静かな校舎内をとぼとぼと歩いていく。節々は痛むけど、出来るだけ普通に歩いているように、そう見えるように努めた。
ここは特別棟らしく、美術室や視聴覚室が並んでいる・・・今の時間使っているクラスはないのかしんと静まった廊下に僕の足音だけが響く。
ゆっくりと歩いてなんとか昼のチャイムが鳴ってから教室にたどり着く事ができた。
ざわついた教室に入ると、そのまま机に体を預けて息を細く吐いた。
もちろんお腹はまだ痛みを訴えている。
「椿、どこ行ってた?」
僕の前に立ちはだかるのは森岡だった。
「どこって・・・」
「朝、制服で会ったのにこんな時間までどこに居た?」
「あー・・・、保健室。」
「どこか悪いのか?」
「ううん、ちょっと疲れちゃって・・・」
森岡は、やっぱり優しい。
見た目は近寄りがたいし、噂だって誰とでも寝る、手が早いなんて言うけど、僕の欲しい優しさを森岡が与えてくれている。それが体と引き換えに、だなんて思うとちょっと笑っちゃうけど。だって、いつだって心配してくれるのは身体を重ねた後だから。
でも今はそんな風に思いたくない、な。
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