僕をよろしく | ナノ
僕をよろしく
07
やっとの気持で一日を終えて、部屋に戻っても、なんていうか気力がなくて。こんなにも落胆するとも思わなかった。
僕が会長に抱いていた物は・・・なんだったんだろう。
ただ、話ができればよかった。
あの声を近くで聞けるだけで心地よくて・・・
尊敬、してた。
今だって尊敬し、あこがれている。
僕には持っていないものをたくさん持ってて、どう頑張ったって、あの人のようにはなれないって分かっていて。それでも少しでも近づけれたら何か僕が変われるんじゃないかって・・・そんな風に・・・
僕にとっての初めてのプラスな人だった。
そこまで考えて“やっぱり”と。
やっぱり僕は周りが見えてなくて、僕は自分のことしか考えていないんだ。友達の事を思いやる事もできない僕は、会長に気遣う事も・・・できずに終わってしまった。
「―――・・・。」
どうすれば、僕は・・・
「・・・椿」
突然の声に慌てて振り返ると、部屋の入り口に森岡が立っていた。
「そんな驚くなよ・・・」
「いつのまに・・・」
「結構普通に入ってきたけど?」
傍までやってきた森岡が、座り込んでいる僕を覗き込んだ。
「落ち込んでんの?・・・・会長に、もう会えないから」
「なっ、何言って・・・」
「拓深から聞いた。会長と密会してたんだって?拓深、会長大好きだからそりゃあんな事になるわな。」
「―――。」
「会長の事・・・」
そこまで言って、森岡の手が僕の肩に掛かり、そのまま勢いよく床に倒される。
押し倒されて、森岡に何されるかなんて・・・聞くのは野暮な事なのだろうか。
なぜか森岡の視線が佐古のようにきついものに感じて思わず視線を逸らした。点いていない部屋の蛍光灯を、ぼんやりと眺めていたら、森岡の指がボタンに掛かって・・・
そんな気分じゃない、とも
今更、体を重ねたくない、とも
言い出せなくて―――・・・。
「会長と、こんな風に・・・とか想像してた?」
「・・・してない」
「会長に近づいて、もしかしたらって思った?」
もしかしたらって、なに?
恋愛だとか、体の関係・・・って事?
森岡が何を言いたいのかさっぱりで。
でも森岡の口から、会長と言う言葉が出るたびに、僕の肌を森岡の唇がきつく吸い上げる。
その感覚に、身震いするほど感じていた。
こんなのされた事、なかった。
唇を合わせて、手で擦り上げて勃たせれば、後ろをほぐされ揺さぶられる。その繰り返しで、それが当たり前なんだと、普通なんだと思っていたのに。
森岡はこんな風に優しく抱く事もするんだと、それを味わってしまえば今までの行為の意味を知って、切なくなった。
優しく抱く相手もいれば
僕のように淡々と抱かれる者も居るという事
そんな現実を突きつけられた
ならば、森岡の気分でいいから
優しく抱かれる時を、
優しく肌を啄ばむような唇を
気付かないフリをして、感じていても・・・いいよね。
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