僕をよろしく | ナノ



僕をよろしく
01






また、だ・・・。


 ため息を洩らすと、そっと上履きをゴミ箱に持って行き、上履きの中に詰め込まれたゴミを捨てる。それが、ほぼ日課になりつつあって2週間・・・・会長とベンチを共有し始めて一週間が過ぎた頃だった。


 初めは誰か、会長の追っかけなんかに・・・バレたのかと思ったけど、そこまで酷い目に遭うわけでもなく、単に僕の何かが気に食わない誰かがやってることなのかもしれないと思い始めた。

 会長の追っかけだったら、きっとこんな軽いことじゃすまなさそうだし・・・と僕に忠告に現れた佐古の事を思い出す。

 それに、あの会長の手帳を拾ったことで誤解をされ、僕のことを気に食わないと思うのならそれでいい。早朝のひと時さえ、誰にも邪魔されないのならこれくらいなんてことない。
 それくらい、僕の中で会長に会えるわずかな時間が大切な物だった。


 このちょっとした嫌がらせだって、時間が経てばさめるはずだから・・・。




「田嶋?」

「!・・・あ、あぁ・・・瀬川、だっけ」

「どうした?」

「う、ううん、なんでもない。ゴミ・・・捨ててただけ。」


 後ろから声を掛けられ、不自然に肩を揺らしてしまったけど、瀬川には怪しまれずに済んだようだった。
 上履きを慌ててその場で履いて、教室へと向かおうとすると瀬川が隣を歩いてきた。


 そんな感覚が不思議に思えて・・・僕の隣で誰かが一緒に歩くという感覚が。思わず瀬川を見上げる。

 赤い髪が、揺れて。
 瀬川も僕の視線に気付いて、視線を向けた。

「・・・?」

「あ、いや・・・おはよ」

「おはよ。教室行くんだろ?」

「うん。」


 教室までの道のりを一緒に歩く。入学してから、初めてのことだった・・・誰かと廊下を歩くって事が。

 会話らしい会話なんて無かったけど、そんな感覚に足元が浮つく感じだった。



「皓っ!オハヨウ。何してんの?」

 後もう少しで教室という所で瀬川に声を掛けて来たのは、このあいだも瀬川の隣にいた中性的な彼。


「おぉ、壱智(いち)おはよう。あーこいつが相川壱智、な。」

 そんな説明を瀬川が僕に振って、僕が小さく頷くのを相川はジッと見つめていた。

「あーえーっと、会長の手帳取った子」

「壱智、バカ。あれはもう済んだろ。」

「ってか、皓!宿題写すって言ってたのに」

「そうだった。ってか壱智起こせよな・・・」

「だって皓いくら起こしても・・・」


 二人で話し始めたところで、僕は一歩後ろを歩き、自分の教室の前で立ち止まった。
 
 瀬川に“また”と声を掛けるのもおかしいような気がして、でも黙ったまま教室に入るのも悪い気がして・・・
そんな僕に気付かず、振り返ることもせず、瀬川と相川は一つ向こうの教室に消えていった。


 二人が消えたところで僕も教室に入る。


 そしていつものように鞄の中身を机に詰め込むと、机にうつ伏して、今日の会長との会話や姿なんかを思い出して・・・

 そうやって過ごすのが僕の毎日。





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