僕をよろしく | ナノ



僕をよろしく
21







 ・・・・き


 つばき


 ―・・・お母さん?
 
 ―・・・お父さん?


 ぼくのなまえ・・・もっとよんで?


 つばき、ってぼくのなまえだよ



 おんなのこみたいって、いわれても

 ぼくはすきだよ

 ぼくにあたえてくれたものだから・・・・


 たとえそれが・・・・





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「椿っ!」

「っ、はいっ」

 声に驚いて目を開ければ森岡が僕を覗き込んでいた。

「ぷ。はいってなんだよ」

「え?あ、あぁ・・・夢見てたみたい」

「飯、行かねぇの?」



「そんな時間なんだ・・・」


 身体もなんだかダルくて。それほどお腹も空いていなかった。出来れば食欲よりも睡眠を優先したい・・・。そう言えば微熱あったんだっけ・・・。



「―・・・ダルイか?あんなとこでやったから」

「ン・・・んん、大丈夫。ちょっと疲れてるみたい・・・ご飯、いいよ。もう少し寝とく」

「そうか」


「ごめん・・・誘ってくれたのに」


 折角誘ってくれたのに。こんなこと・・・初めてだったのに・・・こんな機会を簡単に僕は手放してしまうんだ。


「いいよ、俺のせいだしな」

 そういって僕の部屋から出て行った森岡。

 森岡もそれなりに何か思うところがあったのだろうか。僕にした行為対して悪い事をしたと思った?それとも置いて先に去った事に対して?
 どちらにしろ、森岡を動かしたのはほんの少しの罪悪感だろう。

 ダルイ。身体も、考える事も。
 起き上がっているのも億劫で、少し寝ようとまたベッドに身体を沈めた。







 目が覚めた頃にはすでに空がうっすらと明るくなってきていた。久々にしっかりと睡眠が取れたのか、昨日の熱によるダルさもなくなっていた。

 そして、ベッドから起き上がると、枕元に袋に入ったおにぎりが置かれてあった。いつの間にか聞いていたコンポも電源が落とされていて・・・。
 きっと、森岡が全てやってくれたことだろう。そんなやさしさがくすぐったかった。そんなルームメイト、クラスメイト・・・友達に近いことをしてもらえるなんて。どこかで僕は身体だけだと諦めていたから。


 シャワーを浴びて、身支度を整えると学校へ向かう。おにぎりも忘れずに鞄に入れて。


 あの木の下のベンチに向かった。会長と会いたくないと、会わないようにと思った矢先なのに、僕の足は向かっていた。
 昨日の・・・・温もりがそうさせた、なんて事は言わないけれど、どこかでまた会えたらと、会長がこのベンチに来てくれればと、思っていたのは確かだった。

 もう一度、会いたかった。


 ベンチにると森岡が置いてくれたと思われるおにぎりを頬張る。食堂へ足を運ぶ事がさすがに多いけど、週2・3回は購買で済ませてしまう。
 あの時の、僕への影口が忘れられない、周りの生徒の視線が怖い。


 一人で食事を取りたいわけじゃない。でも無理して中学の時のような、本当に友達なのかと考えてしまうような付き合いが欲しいわけじゃない。

 森岡が・・・どう思っているか分からないけど、森岡の優しさに触れて、もう少し親しくなりたいと思い始めていた。




「おはよう」

「・・・お、おはようございます」


 期待していたとおり、朝日を受けながら現れた会長を見て、ほんの少し自分の体温が上がった。





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