僕をよろしく | ナノ
僕をよろしく
14
駆け込んだ教室は、まだ生徒がまばらにしか居なくって、そのまま自分の席に着くと机にうつ伏した。
恥ずかしい、バカみたい。
何を自惚れていたんだ。
会長はちゃんと赤毛の彼と、女の子のような彼の事は・・・覚えていたのに。
昔から、影も薄くて・・・まぁ、それが僕らしいといえば僕らしいのだけど。
「田嶋!」
急に名前を呼ばれて顔を上げた。教室の入り口で僕を呼ぶクラスメイト。
「田嶋っ客!」
そういって手招きをする。
立ち上がり入り口に向かう僕と入れ違うようにそのクラスメイトは自分の席に戻っていた。
誰が僕を?
「・・・・」
目の前に立つのは僕よりも小柄で、少し長めの髪をピンで留めている生徒。その容姿に驚いた。まるで女の子が学校に迷い込んでいるのかと思うくらいの、可愛い容姿。
昨日の女の子のような生徒も可愛かったけど、彼はまだ男っぽさがあったし、そこまで可愛いといった感じでもなかった。
でも、この目の前にいる生徒は・・・・
「会長に付きまとうなよ」
と、そんな見た目とは裏腹に、きつい視線で僕に言葉を叩きつけた。
「え?・・・・付きまとってなんか・・・」
「ストーカーなんだろ?すごい度胸だね、あの会長にそんなこと・・・。全校生徒が黙ってるなんて思ったら大違いだよ。」
「だから、ちが・・・」
「僕は1組の佐古 拓深(サコ タクミ)覚えておくといいよ。次・・・会長に迷惑かけたらただじゃすまないよ。」
「ちょ、ちょっと待って・・・」
僕の言葉は一切聞くことをせず、佐古は去って行った。登校して来た生徒に見られて、あんな会話聞かれて・・・また変な事を影で言われるんじゃないか、と思うと気が重くて仕方ない。
何より、僕は会長のストーカーなんてしていない。
さっき出合った会長の、小説を読む姿を思い出して・・・そして小さく頭を振った。
どうせ、会長から何かのアクションがあるわけでもないんだし、僕が会長との接触を避ければ良い。
昨日の手帳だって、偶然だったんだし。拾っても元に戻しておけばこんなことにならなかった。
さっきの事も何を黙ってベンチに座っていたのだろうか。会長が腰を下ろした時に僕はあの場を去ればよかった。
そしたら・・・・あんな事で傷つくことも、無かった。
教室に居た数名からの好奇の視線を感じつつも、僕は重めの前髪で顔を隠すように少し下を向き、また自分の席に戻った。
まだ授業も始まって無いのに、疲れた・・・・。
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