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sunny place
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もっと上手く生きていけたらいいのに
もっと気軽に歩いていけたらいいのに

「だからこそ良いんだけどな」

最後に秋吉さんがそう言って仕事に向かった。

認められないからこそ、お互いが信じあわなくちゃいけない。
簡単な恋愛じゃない、色々な苦難があるからこそ、振り返ったときにそれは温かくて、色とりどりに光っている。
二人にしか得られない物がある。
だからこそ、良いんだ。


秋吉さんは桐生から俺のことを聞いていたし、東間の存在も知っていた。
そして視線で東間を確信したらしい。

俺の落ち込みにも感付いて、そこから俺たちのことを見抜いてしまうあたり、エスパーなのかと思ってしまうほどだったのだけど。
別れてから、たぶん秋吉さんと桐生も同じような事でつまづいて今に至るんじゃないだろうか。



帰ろうか、と声を掛けてから、俺たちはずっと無言のままだった。
気まずいわけでもなくて、むしろ少し前の方が気まずかったくらいだ。
スッキリしているのに、頭では色んなことが巡って会話にまでたどり着かないでいた。


住宅街に差し掛かると、人通りはぐっと減る。
いつもの自分達は常にくっついて生活しているわけではないのに、外に出れば気を張っていたんだろう。
普通が分からない、と言った東間。

「東間、手を繋いでくれない?」

一拍置いて、東間は俺の手を取ってくれた。
それは凄く自然で、今まで手を繋いで歩く事なんてした事も無ければ望んでもいなかったのに、今やるべき事はこれなんじゃないかと思ってしまった。
思ったことを口に出して、すぐに実行に移されて、望んだのは俺なのにたまらなく恥ずかしい行為だった。

女性の友達同士だって手なんて繋がない――。

「ごめんな」

空気に馴染むように、そっと吐き出された言葉。
俺を疑った事なのか、ここ数日の行動なのか、分からないけど…どうでも良かった。


「変な感じ〜」
「何が。俺の謝罪?」
「こうやって手を繋ぐの。今時誰もしてなくないか?」

「今の俺らにはちょうど良いんじゃない」

小さく笑うと、東間の手に力が込められた。

たまには関係を面白がればいいのか。
願う未来は長くあってほしいから。これが俺たちの休憩だろう。

「熱いな」

夏の気温のせいじゃなく、東間の掌と近くにある体が。

熱の侵食が、自分を捕らえていくようだった。
掌から這い上がる物は、逃げられないと言われているようで。たった片手の面積だけで自分は満足さえしてしまうなんて…。

どれだけ飢えてたんだろう。

捕らえて、離さないで。
口には出せないけれど、多分ずっとそんな欲だけはあるだろう。

「手錠とか、嵌められてたらカムフラージュになんねぇかな」

東間は握った手をぐいっと上げて、そんなことを言う。


俺の欲望は手錠をすでに掛けていたけれど。






END

09.12.12




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