sunny place | ナノ



sunny place
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結局、昼を回ってやっと思い腰が上がった。
それから時間をかけて、かけて。

一時間かけて自宅に戻ってきた。


せっかくの休みが、丸潰れだ。


東間と二人で過ごす休みが・・・。



家の前でまた立ちすくみそうになったけど、もうここまで来たら家に入るしかないし・・・と扉に手を掛けた。

そっと扉を開くと、そこに。



「す、すんませんでしたっ!!!」



「・・・・・・・・ええっ!?」


なんで?

なんで藤原が居るの?
そしてなんでいきなり謝ってんの?


視線を藤原から上げれば、すっごい不機嫌な顔で立っていた東間。
俺だってそんな東間見たことない、すごいオーラが立ち込めていた。


「フジ、しっかり謝れ。」

「ちょ、篤、まじ勘弁・・・」

「もう一発食らうか」

「わ、判ったからっ!!・・・・っ、恵生ちゃん、ごめん、ほんとごめんっ・・・許してっ!」


そうやってまた謝ってくる藤原をよく見れば左頬が異様に腫れ上がって、唇の端からは血が滲んでいた。

ってかさっきの会話から・・・やったのは東間?


「・・・え、っと、一体何?」



「恵生ちゃん!篤の首のアレ、あのキスマーク!やったのは俺ですっ!!」

「・・・・、え?・・・・えぇっ!?」


「ど、土下座するから許して!」


そう言って玄関で額を擦り付け始める藤原。


「ちょ、やめろって、それ。」

「許してくれる?」

「許すとか・・・意味わかんないんだけど?」


「恵生、とりあえず上がれ。」


不機嫌なまま、東間が俺に初めて声を掛けた。


「ん・・・。」


俺が靴を脱いで上がった途端、力強く胸元に引き込まれる。
慌てて、制したものの、東間も引くつもりもないらしく、力を緩めてくれない。


「ちょっ・・・」

「寒かったろ?風邪ひく。」


俺の髪に顔を埋めて、さっきまでの怒りを露にしていた東間とはまったく違う・・・優しい声。


「東間?ちょ、人いるしっ!」

慌てるって。
傍から見たら異様だ。
男同士で抱き合って、優しく髪を梳かれ、東間は髪に口づけを落としているんだから。




「フジは知ってる。俺と恵生の事。」



「えっ」




慌てて東間から顔を上げて藤原を見ると、視線を逸らし、照れていた。


「え?なんで知ってんの?言ったのか?」

「うん。合コン誘ってくるから、うっとうしくてフジにだけ全部喋った。」

「うそ・・・・」

「大丈夫、フジはバイだから。口も堅い。」

「えぇっ!」


なんだ、なんなんだ。


「え、ちょ、昨日の部屋が狭いとか、ベッドがひとつとかって・・・・」

「あ、ごめん。恵生ちゃんが篤との関係バレないようにって必死っぽくって、ついついからかいたくなって、さ?」


さ?じゃねぇーーーーよ!


「フジ、まだ言うことあるだろうが」


俺の頭の上から、また不機嫌な東間の声。


「あ、えーっと。さっきも言ったけど、篤の首の痕は、俺がーちょっと面白がって、ね?痕つけたら恵生ちゃんどんな嫉妬するかな〜なん、て・・・」


もう、呆れと安堵とで言葉が出なかった。


女じゃなかった。
本気じゃなかった、遊びだった。
しかも俺に宛てたものだったなんて・・・。


ほっとしたのもつかの間、急に怒りが湧いてきて、力いっぱい藤原の腹に足蹴りを食らわせてやった。
玄関の方に転がっていく藤原。


東間の笑いが、体を通じて伝わってくる。


「なんで、判ったの?俺がそれ見たって」

「布団は被ってねぇわ、首元開いて寒いわで目ぇ覚めたの、早朝に。恵生はいねぇし、体は二日酔いもあって気持悪いし、シャワーだけ浴びようと思ったらコレ見えて」

って自分の首元を指差した。


「慌てた。マジ恵生が居ないのはこれのせいだと思ったら取り合えずフジ呼んで、問い詰めて一発殴って・・・それから恵生に電話した。」


また、俺を抱きこむ東間


「んで、なかなかお前帰ってこないし。なんかあったら・・・・フジをどうにかしてた・・・」



東間の首元に見える痕に


そっと自分の唇を這わせた。



「冷てぇな・・・ゴメンな。寒い中一人にさせて」


東間の首は温かくて、薄い皮膚をきつく吸った。
藤原が付けた痕よりも少し大きめに、かぶせるように、と。




「―・・・俺、帰ってもいいかな?」


すっかり忘れてた藤原の存在。
後ろから聞こえた声に慌てて唇を離した。

振り返って藤原を見る。


「あ、大丈夫、恵生ちゃん、篤は俺の好みじゃないから安心して?どっちかってーと、恵生ちゃんの方が好みかな。これからも・・・・よろしくね?」

「―――っ!」

「フジッ!てめぇはこの家出入り禁止だっ」



藤原が閉めた玄関の扉に東間のスリッパが飛んでぶつかった。


なんだか判らないけど、俺らの関係を知っている人間が居るって・・・・ちょっと安心できる。

誰にもバレちゃいけない、誰にも見つかっちゃいけないって、そんな息苦しいような生き方を俺だけじゃなく東間にさせてるんだと思ったから。


そんな友人が居れば、少しは心強いものだ―・・・


そして、まだ俺と東間は繋がっていることができるって、安心した。


いつまでもこの鎖が切れませんように。


できることなら、ずっと。




END

07.12.27 


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