sunny place | ナノ



sunny place
09






どう、しようかな。


とりあえず、帰るところのない東間はあの家に住むかな。


俺は、母さんの家にしばらく置いてもらっても良い。


それから、会社の寮の手続きして・・・・入寮させてもらえるかな?




シン、と静まり返った公園で、そんなことを考える。

これからの俺の身。


頭の中の映像は消えることが無くて。


あれから、どうして良いかわからなくて、東間のシャツを掴んだまま、しばらくボーっとしてた。

それから東間をそのままに、部屋で時間を過ごしたけど、だんだんと居たたまれなくなって上着を掴んで家を出た。
外に出た時にはもう日が明けていて、公園でぼんやりと座ってからどれくらい経ったのかと思うけど、そんなことどうでもよくって。


「・・・ズッ」


誰なんだろう。

きっと大学の女の子。

最近の飲み会って言うのも合コンだったりするんだろうな。
東間のことだから、きっとモテる。

高校の頃とか、そんなの言ってられないくらい、大学生って楽しいものだと思う。
そんな楽しい時間を、俺は東間に提供することができない。


何より、あのキスマーク。


東間が浮気するとは思えない。
きっと東間だったらそうなる前に・・・・言ってくれるはずだから。

俺とのすれ違いの時間が・・・あんな結果なのかもしれないけど。

それに、違うとしても結局あの場所に誰かが唇を落としたんだ。
東間は・・・・受け入れた・・・?


ジワリと奥から押し出される涙を必死で押さえ込んだ。

冷たい風で鼻先や頬が冷えているけどけど、この場から動くことさえできない。


もう、このまま・・・


東間が迎えに来てくれないのなら、それで良いような気がした。



登り始めた太陽を見て、少しでも温かくなったら良いな、なんて考えていたら

ポケットで震える携帯。


取り出してみれば、待ち望んでいたような、そうでないような、東間からの着信。

ディスプレイに写る東間の名前を眺めていた。

しばらくすれば、切れて暗くなったディスプレイを見て息をついた。


どうやって、出ればいい?

なんて、声を発すればいい?



「・・・・・ズッ」



信じてはいるんだけどな。
東間がちゃんと俺の事思ってくれてるって。
なのにこのすれ違った時間の分だけ不安にさせる。
肌を合わせない事が多ければ多いほど、不安になる。

そして、あの痕。

俺は東間につけたことなんて数回なのに。
どうやって、東間は許したの?
相手はどんな子なの?

可愛い女の子・・・いや、東間のことだから年上の女性とかもありえる。

俺に、勝ち目は・・・ある?


いつだって、東間が言ってくれるから言葉をくれるから自信を持って、東間の傍に居れるのに。
東間がもう何も言ってくれなくなったら、俺はまた逃げてばかりのような気がする。
それもまた、俺の不安要素・・・・。



また、震えた携帯。



なんて、言葉を

東間は俺に向けるのかな?


かすかに震えながら通話ボタンを押す指は、寒さのせいなんかじゃなかった。




『恵生?』

「・・・・」

『今どこ?』


「・・・・・今?うん、ちょっとコンビニ。腹へってさ〜あぁ東間も何か要る?買っていこうか?」

『今すぐ、帰って来い』


「え?・・・・もうちょっと、掛かりそう、なんだけど」


口元だけ携帯から外して、細く息を吐いた。
鼻をすすることもできないから、そうやって息するしかない。
東間にばれたくない。


『・・・良いからっ無理すんなっ!帰ってこないんなら迎えに行く。どこにいるんだよっ!』

「何・・・言って・・・」

『お願いだ。帰ってきて。誤解だから・・・』

「東間?」

『帰ってきて?』


東間は鏡でも見たのだろうか。
明らかにわかっている言葉の数々。
俺がしらばっくれた意味ないじゃねーか。


泣きたいのは、こっちなのに


東間の声が情けなくも泣きそうな声で訴える。


「・・・・判った。もうちょっとしたら、帰るから・・・・」


なんでこんなに緊張してるの。
問い詰めて、東間にいっぱいいい訳させてって、すればいいのに。

やっぱりどこかで“捨てられる”って事に怯えている自分。

「・・・・・・・ッ、はぁ」


考える前に、話しをするべきだな。

判ってるんだけど、もうちょっと・・・もうちょっとだけこの公園に居させて―・・・。





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