sunny place | ナノ



sunny place
08






「遅い」

眉間にしわを寄せて何度も見た時計はすでに午前2時。

この間、遅かったと言ってもこんなに遅くなったことは無かったと思う・・・。

変に不安になって、電話をかけたけど繋がらなかった。
コールは鳴っているのに、出ないのだ。

東間に何かあったのかという不安と、東間がこのまま去っていく不安とに挟まれて気が気じゃなかった。
変に手に汗かいて・・・。
メールもすでに山のように送っている。

そんな俺に比べて、シロはとっても落ち着いていた。


「なぁ、シロ。どう思う?何してると思う?」

なんて問いかけてみても、大きな目で見つめられるだけだ。

「はぁ・・・」

押しつぶされそうな胸から息を吐いてなんとか呼吸を保つ。

もう深夜のテレビなんて耳に入ってなんて来なかった。





“ピーンポーン・・・”



静かな部屋で、異様に大きく聞こえたインターホン。
相手を確認せず、慌てて玄関へ向かった。

「とうっ!・・・・・・え?」

扉を開けて、そこに立っていたのは以前東間が連れてきていた友達だった。

「えっと・・・フジ?」

「藤原悠都デス。・・・篤連れて帰ってきた。」

そう言う藤原の肩に担がれている東間・・・。
こんな東間、見たことない。

どうやら相当飲んだのか、グッタリとしていた東間。
藤原の方が身長も体格も東間に比べれば小さいのに、担いでここまで来たってかなり体力が要っただろうに。

「だ、大丈夫か?」

「ん?篤は飲みすぎてるけど大丈夫だろう。俺たちも調子乗って飲ませすぎたしな。あ、タクでここまで来たから、明日でも篤に金請求してたって伝えといてよ。」

そういって玄関に入って、靴を脱ぐ藤原

「あ、篤の靴脱がして?」

「え?」

「ん?あんたじゃ篤担ぐの大変だろ?ベッドでもソファーでもとりあえず運ぶよ。」

「あ、あぁ。」

慌てて東間の靴を脱がすと、東間を引きずるようにして部屋に入っていく。

「あ、ベッドに」

そう後ろから言えば、ボスン!と東間を投げ捨てるように転がした。

「あーーーー重てぇ・・・」

「・・・ありがとう。ゴメンな。」

「何であんたが謝んの?」

「え?・・・いや。」

「恵生ちゃんだっけ?篤とはシェアしているだけの関係だよね?・・・にしては部屋狭くない?ベッドもひとつだし・・・」

「あ、あぁ俺と東間は生活が逆だから・・・」

ってヘタな嘘とかついてみる。
俺と東間がそういう関係だって知られたら・・・・学校に居づらいだろうし。

「そ、・・・じゃぁまぁ。今日は遅いし俺も帰るかな・・・」

「あぁ・・・そう。」


正直、苦手だ。
目の奥で何かを探るようなその視線。
東間と今、一番近くに居るであろう藤原・・・。


「じゃね〜。またね、恵生ちゃん。」


含み笑いのような、いやらしい笑いを残して、そそくさと帰って行った。
ガチャンと扉が閉まって、それから俺も急いで鍵を閉めた。




ベッドに横になる東間がまだ上着も着たままだと気付いて、寝かせたまま体を横にしたりして上着を脱がせた。
かなり飲んでいるのか、火照った体。
揺らしても起きる気配のない東間。


今日はたくさん話しをしようと思ったのに。
東間と一緒に、時間を気にせず過ごしたかった。


「寂しいよ・・・」


小さくつぶやいてみるも、その言葉は聞いてもらえることなんてなくて。

そっと寝ている東間の胸に、頭を預けた。

ドクドクと、東間の鼓動を感じて、温もりを感じて。
いつもならこんなこと自分でしなくても、東間は抱きしめてくれるのに。


「―――ん、う」


苦しそうにする東間の声に慌てて頭を上げた。
相当飲んだだろうし、服が苦しいのかもしれない、とシャツのボタンに手を掛け、3つほど外した所で・・・俺の思考はショートした。




開いた首もと。


そこに小さく赤い痕があった。



俺があまり東間にはつけることのない


それは・・・紛れもない“キスマーク”





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