sunny place | ナノ
sunny place
07
「櫻田〜飲んでるか〜!?」
頬をアルコールで赤く染めた・・・えっと、この人誰だっけ?
日頃、滅多に仕事場では顔を会わせることのない事務所の人も、忘年会では一緒に飲むことがあるのだと言うことを知った。
現場主任は一緒に働いているといっても、上司で事務所の人間との関わりも深いらしく、忘年会が始まった時も上の人間同士が固まり、現場での中間の人間が固まり、そして俺のような新人が端に座ってビールや酒を配ったりとしていたのだけど・・・。
時間が経てば気分のよさそうな人間がトイレに立ち、そして帰ってくれば誰彼構わず隣に座り、話しに花を咲かせる。
それでも俺は周りとあまり喋らないので、絡まれることもなく、このまま忘年会も終わっていくのだと思った。
だが、矛先は回ってくるらしく。
時折思い出したかのように俺の名を呼び、決まって「仕事はどうだ?」と聞かれる。
繰り返し聞かれ続けるその言葉に、正直飽きてきた。
話に間が空けば「飲め」とコップにアルコールを注がれる。
酔ったら・・・電話しろと言ったのは東間なのに。
小さくため息をついてコップに注がれたビールに口を付ける。
ちょうどさっきトイレに行ったときに何気に開いた携帯に届いていたメール。
東間も忘年会に誘われて、参加してくると言う報告のメール・・・。
東間も忘年会があると言っていたし、この時期だからかぶることだって当たり前。
仕方ない。
仕方ないんだけど。
なんだか腑に落ちなくて・・・。
メールも返していない、でも東間からの連絡はそれっきり届いてなくて。
きっと忘年会に夢中なんだろう。
約2時間を予定していた忘年会は30分ほどオーバーして幕を閉じた。
「櫻田ー!二次会行くぞ!お前の知らないような世界教えてやるからついて来い!!」
店を出て、店の前ですでに円陣を組んで次はどこへ行こうかなどと話しを進めていたらしく、最後に出てきた俺を待ってましたとばかりに誘ってくる。
「え、遠慮しときます・・・」
「何言ってんだ、若い男が。俺が櫻田くらいの頃はそれはもう・・・・」
「いえ、もう吐きそうな感じで・・・」
「おいおい、大丈夫か。」
「飲みすぎたみたいで・・・帰って寝ます。今日は楽しかったです。また月曜会社で・・・。失礼します。」
実際酔っているわけではなかったけど。
いつまでもオジサン連中に紛れて飲んでいられる気もしなかったし、早く家に帰りたいと思った。
いっそ、むちゃくちゃに飲んで、東間を呼び出して、なんて馬鹿なことも頭をよぎったけど。
そんなことすれば東間に変な心配を掛けて、また東間を束縛しかねない。
電車に揺られ、自宅のある駅で降りると駅前のコンビニで飲み物とお菓子を買って、家に向かう。
きっと明かりのない部屋。
判ってるけど、シロが待っている。
俺が待ってれば、東間が帰ってくる。
週末だし、寝てしまわずに部屋で東間を待ってみるのも良いかもしれない。
少し会話をすればこの沈み気味の気持も簡単に晴れるはずだから。
そう思えば帰りの足取りが軽くなった。
数歩あるいて、またコンビニに慌てて戻った。
もしかしたら東間は帰ってきてから飲み直したかったりするかもしれない、と適当にアルコールも購入して帰ることにした。
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