sunny place | ナノ
sunny place
05
◇
今日も残業を言い渡された、年末だからか、最近本当に多い。
そんなに体力があるとは言えなくて、帰っても直ぐ眠りにつくという、平日はそんな繰り返しだ。
いつもの帰宅時間に少し休憩をもらえて、缶コーヒーを飲みながら携帯を開けば、着信とメールの表示。
開いてみれば東間から。
「なんだろ?」
“ごめん、今日帰宅遅くなる。ダチに連れられて遊んできます。本当にゴメン。できるだけ早く帰るから”
そんな文を読みながら、落胆、よりも噴出した。
最近の中学生でも夜遊びとかしてるんじゃないのか?なのに慌てたような、申し訳なさそうな、そのメールに思わず笑ってしまった。
どうせ自分も残業なのだから、ちょうどいい。
“いいよ、そんなの。今日も俺残業だし。”
そうメールを送れば、俺からの返事を待っていたのか直ぐにメールが返って来た。
“ありがとう、頑張って”
「おう櫻田、彼女からメールか?」
「っ、わ!」
慌ててポケットに携帯をしまう。
「しゅ、主任・・・」
「なんだ、隠すこと無いじゃないか誰も盗み見なんてしない。」
「あはは、違いますけど・・・」
「忘年会参加してくれるんだってな。楽しみにしてるぞー」
楽しみって・・・そんな。
大して期待されるような会話ができるとも思えなんだけど・・・。
忘年会のことは楽しみなような、でも正直行きたくない。
お酒を飲むことはまぁそんなに嫌いじゃないけど、人と喋ったり、そんな集団があんまりなのだ。
できれば家でゆっくり飲む方が好きだ。
残業分の仕事をこなしつつ、夕食は買って帰ろうか、とか東間が何時くらいに帰ってくるのだろうかと考えを巡らせた。
カチャリと空けた扉の向こうが明るくて、東間が先に帰ってるんだと思った。
でも、下ろした目線の先に、見慣れない靴を見つけて・・・
「・・・?」
大きな音を立てて部屋から出てきたのは
「あ、はじめましてー。篤の友達で藤原悠都(ふじわらゆうと)。どうぞ宜しく。えーっと恵生ちゃん?だっけ。」
近寄る知らない人間。
なんで知らない人が家に居るのかと、とにかく一瞬パニックで言葉も出なかった。
「ふじっ!」
慌てるように藤原、と名乗った男を後ろから引き止める東間。
「ご、ごめん恵生。こいつ大学のダチ。悪い奴じゃねーんだ・・・。フジ、お前は早く帰れ。気が済んだだろうが!」
「えぇ〜これからじゃねぇの?ってか俺を邪魔者扱いしやがって・・・」
「いいから帰れっ!!」
「だってルームシェアしてるっつーから・・・」
「うるせーよっ。帰れ!また明日なっ!」
バタバタと俺の横を東間に押されて藤原が家の外に追い出された。
俺はというと、玄関から未だ動けず・・・。
「と、東間?」
「ごめん。ほんと・・・俺がルームシェアしてるっつったら女だろうとか言い出して。しまいには家にまで・・・」
「そう。」
俺がコンビニの袋を提げてるのを見た東間が慌てたようにまた謝った。
「飯・・・」
「あ、東間は食べた?なんだったら半分こする?」
「いや食べてきた。」
「そう、じゃ先風呂入ったら?」
そう、東間を風呂へ繋がる洗面所へ場へ促した。
東間が風呂場の扉を閉めるまで、シャワーの音が聞こえるまで、その場を動けなかった。
誰も、家に入れたことなんて無かったのに。
知らない人間が家に居た、と言うことが自分の中で納得できなくて。
東間のことを篤と呼ぶ藤原。
いつだって東間の周りにはたくさんの人間がいたのだ。
それを、俺は忘れちゃいけないんだ。
テーブルに袋を置いてもまだ動けずにいた俺の足元にシロが寄り添ってきた。
「・・・・お前も、ビックリした?」
俺が女だったなら。
これは同棲、って言ってもらえたのかな?
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