sunny place | ナノ
sunny place
04
昨日とは違って、扉を開ければ食をそそる香りと、部屋の暖かい空気が玄関へと流れてくる。
指先からしびれるように感じるその温もりに、安心した。
「おかえり」
「ただいま・・・」
「どうかした?恵生、早く上がれよ。」
「いや、なんでも。」
靴を脱いで部屋に入るとシロが足元に擦り寄ってくる。
ただいま、と言えば鳴き声で答えるシロ。
俺が上着を脱いでいると東間の腕が俺に絡まってきた。
「ちょ・・・」
「昨日、ゴメン」
「―――もう、良いってば。昨日聞いたし。そんなんで怒らねぇよ?」
「うん、怒らなくても心配させて、寂しい思いさせただろ?」
「ばぁか。大丈夫だって。」
東間の、息が首筋に掛かってくすぐったい。
「東間は遊ばなさすぎじゃね?大学生ってもっと無茶するものじゃねーの?付き合いもあるだろうし。早く帰ってきて夕食の用意とか、そんな主婦じみた事・・・」
「好きでやってる」
そんな風に言ってくれるのは東間の優しさだと、十分に判っている。
いつだって、俺のことを一番に考えてくれて、俺の考えていることまでも理解して動いてくれている。
「あ、東間は忘年会とか無いの?大学の友達とか昨日みたいに頻繁に飲み誘われてるんじゃない?・・・俺も会社で忘年会があって、行って来ようと思ってるんだけど・・・」
「いつあるの?」
「えーっと確か12月の第三金曜・・・」
「行くの?」
「え・・・うん。歓迎会も断ってたし・・・忘年会くらいって思って・・・」
黙り込んだ東間を見上げると、なんとも苦い表情。
「ど、どうかした?」
「行くな・・・って言いたいけど、こればっかりは仕方ない?」
本当は、行く気なんて無かったけど。
俺が家と会社だけの往復しかしないから、東間も遊びに行きづらいんじゃないかとか、そんな風に感じて・・・。
それに一度くらい飲み会に参加しても良い。
どうせ直ぐに帰ってくると思うし・・・。
「うん、できれば出て欲しいって主任から言われたし、それに社会人らしいこともしてみたい?」
そっと東間の表情を伺いながらそんな事を言ってみる。
すっげー心配されてることもわかってるんだけど、さ。
「・・・判った、けど飲みすぎんなよ?あと、なんかあったら電話。酔っ払っても電話。」
「お、おお。判った」
酔っても電話って・・・
「実は俺も結構遊び誘われてて、もしかしたら年末だしちょっと行くかも。でもちゃんと連絡入れるし。絶対。」
昨日の俺に連絡を入れずに遅くなったことをかなり気にしているらしい。
確かに、連絡は欲しかったけど、そこまで心配することでもないのに、と苦笑が漏れた。
「うん、判ったから。飯食おーぜ?」
東間を押しながら、キッチンに向かった。
大きめの鍋から覗いたのはクリームシチューだった。
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