sunny place | ナノ



sunny place
03






朝、アラームで目を覚ませば、まだ隣で寝ている東間。

昨日はあのままウトウトして、東間もまたお酒の力か布団に入って直ぐに寝息が聞こえてきた。

背中に、東間の温もりを感じて眠る。

こんな幸せ、昔の自分では想像もできなかったし、こんな・・・こんな男性の温もりで安らげるとも思わなかった。
でも、必要なのは東間の温もりだけってのは嫌ってくらいわかっている。

そっと東間を起こさないようにベッドから抜け出して会社へ向かう用意をする。


誕生日に、東間が買ってくれたマフラーを首に巻いて。
何も要らない、と言ったのに去年できなかったのに今年も何もしないなんて嫌だと。そして早朝から家を出る俺にとマフラーを提案してくれた。
そして東間に連れられてショップへ行って
一緒に選んだ。

こそばゆくて、温かい。


「いってきまーす」


静かに家を出ればやっと空が明るくなろうとしている所。冬の朝は辛い。







「おう、櫻田、コレ目ぇ通しとけ。参加するならサインしとけよ?ってかできれば来い。歓迎会もやってないからな」


そう言って現場主任から受け取ったのは忘年会のお知らせのプリント。


「あー・・・はぁ」

「櫻田は飲めるのか?」

「いやーそんな飲む機会無かったので・・・そんなに飲めないかもしれません・・・」

「今の高校生とかって飲んでるんじゃないのか?隠れて・・・ま、楽しみにしてるからさ、参加の方向で考えとけ。」

「ハイ・・・」


入社して直ぐに、歓迎会を開いてくれると言う言葉を蹴った。

会社というものがどんなものか知らなかった俺は、ただ黙々と働いて帰る、それを機械的に繰り返すだけだと、誰かと馴れ合うつもりも無かった。
そんな気持の中の歓迎会、楽しめるとも、楽しもうとも思えなかったから仕事を覚えたいとか、もう少し後にして欲しい、だとかを口実に逃げていたのだ。

それが通用したのも、俺が主役だったからだろう。

他に新入社員が居れば違ったのだろうが、唯一もう一人いた新人は入社2週間目で辞めていったのだ。

忘年会は、俺が何と言おうと行われるだろうし、その気になれないのなら用事があるとでも言って欠席すれば良いだけだ。

入社した頃に比べれば・・・少しは社員とも打ち解けたけど。

何より飲みに行くと言う事よりも、早く家に帰りたい、と思ってしまうのだ。


東間に・・・相談してみようか。


プリントを作業台の机にしまいこみながら、次の仕事の工程に頭を巡らせた。





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