sunny place | ナノ
sunny place
02
―――12月24日
「はぁ・・・」
ショーウィンドーを前に小さくため息をつく。
どうしよう。
チョコが食べたい。
でも、東間はあんなにも生クリームにこだわってた、って事はチョコあまり好きじゃないんだろうなぁ。
俺だってそんなに生クリームは得意じゃない。
小さい頃、母さんがクリスマスに買ってきてくれたホールケーキは生クリームだった。
はじめて見た目の前にあるホールケーキに、小さいながらに感動した事を覚えている・・・。
で、嬉しさのあまり、チキンまでも平らげて、それでもケーキにがっついて・・・
母さんが止めるのも聞かず食べ過ぎて気分が悪くなったんだ。
馬鹿みたいだけどさ。
それからホールケーキなんて買ってきてくれたことも自分から買うことも無くなった。二人だけでホールケーキを食べる事が大変な事は知ってるんだけど。
どうしても東間と・・・食べたいって、思う。
「お決まりでしょうか?」
「・・・、この生クリームのホールケーキ、ください」
東間と一緒にケーキが食べたい
自分でも東間の意見に折れるだろうな、って判ってた。それがちょっと悔しかっただけ・・・。
◇
「ただいま」
玄関を開ければ、チキンが焼かれているだろう香りが漂ってきて、空腹な俺のお腹はすでに悲鳴を上げそうで。
「お帰りー」
机に食事を並べているであろう東間が顔を覗かせた。
「あ」
「どうかした東間?」
そう言って部屋に入ってみれば
机の上に置かれた、ケーキの箱。
「わっ、何買って来てんだよ!」
「だって恵生は仕事だから買出しは俺だろ?」
「ってか、買ったんならメールとか・・・あぁ、もう。」
しかも明らかにホールのケーキ箱。
ホール二つもどうやって食えって言うの!
「とりあえず両方とも並べよう。折角だし」
そうやって東間が買って来たケーキの箱から出てきたのは
チョコのホールケーキ
思わず、自分の持ってるケーキを箱ごとベランダから捨てたい衝動に駆られた。
「やっぱチョコにした。恵生のも開けるよ?」
そういって俺の手から取り上げられた箱から出てきたケーキを見て、東間の手が止まった。
「・・・恵生」
「お、俺ら恥ずかしくね?なんかっ」
ケーキを二つ並べ終えて、料理も並べ終えて
東間が俺を手招きした。
「恥ずかしくなんか、ない。かなり俺は嬉しいけど?」
そう言って、生クリームを東間が指ですくって舐めた
「つまみ食い厳禁だっ!」
「じゃ、恵生も」
そう言ってまた指ですくったクリームを今度は俺の口に付けた。
「んっ」
そして直後に触れた東間の唇。
そんな、男の妄想というかなんていうか・・・生クリームとかっ!って真っ赤になってる俺にお構い無しに東間はどんどん大胆になっていって・・・・
生クリームが、っていうか、この行為が
甘すぎるんですけどっ!
「んぁっ!・・・・と、まっ」
結局、食事にありつけたのはかなり後の話で。
折角のチキンが冷えてしまったけど
二人で迎える初めてのクリスマスがこんなにも甘いって事はよーく判った。
来年からはライトなクリスマスを迎えることと
ケーキでは我が儘言わない、って心に誓った。
メリークリスマス
END
クリスマス企画/拍手SS
07.11.28
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