sunny place | ナノ
sunny place
アワイロ。
そいつは、ちょっと噂になっている奴で。
明らかに周りの人からも好奇の目で見られていた。
そいつの存在は前から知っていたけど、
同じクラスになった今でも俺はそんなに話しかけることもしない。いわば、周りから傍観している、そんな立場だった。
そいつは別に自分が周りからどう見られているとか、判っているんだろうけど、静かに、静かに日々を送っていた。
周りが関わる事もしなければ
本人から回りに何かしら関わりを持つようなことをしなかった。
それが彼なのだと、そう思ったから俺から話しかけることもなかった。
それは突然やってきた。
俺が彼に怪我を負わせたんだ。
人を傷つける、という行為。ケンカ、となると慣れている人は慣れているだろうけど・・・ほんと、それは俺の不注意だった。
だから心底、後悔したし、謝り倒した。
痛いであろう、本人も大した事ない、としか言わないし、周りからはそんな事件をからかう声しか掛かってこない。からかう声は俺の事を表にしながら、彼を傷つける言葉だった。
なのに聞こえているはずの彼は何の反応も示さない。
おまけに「気にするな」と俺のことを気遣う。
俺の彼に対する関心はそこから始まっていたのだ。
彼は5月頃から傍に一人の友達を置いた。
トウマアツシ。誰からも好かれるような、そんな明るい奴。特定の友人とつるむんじゃなく、誰とでも平均的に接する、そんなやつ。
そんなトウマが、彼にずっと付いていた。特定の友人を作らないトウマが。
トウマは彼の事を、俺の片思いだと、そう言った。
それは恋愛として、というのを聞くにはなんだか野暮で。見ていてもそうなのだろう、と言う程度にはトウマも彼にベッタリだった。
まるで彼が傷つかないように、と守る兵士のように。
俺は彼に怪我を負わせた事をきっかけに親しく近寄った。彼がどう思っているかは判らないけど、初めの頃のような警戒心は徐々に無くなってきていると思った。
きっと、素直な性格なんだろう。
そうさせないのが周りの人間からのせいなだけで。
そんなある日、彼に対する嫌がらせの話しをトウマから持ちかけられた。協力して欲しいという言葉に二つ返事で答えた。
きっと別の人間んだったら断ってたかもしれない。
それは俺にもわからない。
でもこのときは俺に出来る事なら・・・そう思った。
俺は家が近い事もあって、早めに学校に来て、彼の下駄箱に仕掛けられる嫌がらせを目撃する事。
仕掛けられた内容の確認をして、それをトウマに伝え、出方を考える、というもの。
ある日、写メで犯人の現行を納めた。
決定的だと思った。すぐ捕まえてしまえば良い、そう思ったのにトウマはまだ何か考えている様だった。
そんなトウマは何を思ったか、彼と距離を置いた。
なぜ、そう問うと「作戦だ」と答えるトウマ。何を考えているのかはさっぱりだった。
トウマが彼の近くに居ないのなら、俺が傍に居てやる、そう思った。
なのに。
彼に必要なのはトウマだった。
彼の頬を流れる一筋の涙を見たときに
怒りと、愛しさが一度に溢れた。
俺じゃダメなのか。俺なら今、お前を守ってやれる。
そんなセリフは飲み込んだ。
俺じゃない、彼の求めているのは俺じゃない。
嫌がらせの犯人の呼び出しを彼には隠してトウマと俺とでスタンバった。彼にはトウマからの呼び出しという事にして。
俺の視線の先に、犯人が居る。
俺の役目はイザという時に犯人が逃げ出さないように捕獲する役目。マジ、脇役もイイトコだ。
目の前で繰り広げられる、トウマと彼の告白劇。
自分の胸の締め付けは気付かない振りをして。
ドキドキと、彼の受けるキス、その姿に興奮を覚えた事にも蓋をして。唱えるのは平常心。
その一通りの行動は俺だけじゃなく、しっかり犯人にも伝わったらしく、きっと犯人と俺の頭の中にあるのは
"諦め"という言葉だと思う。
「ヒロ、ヒロ!ねぇ聞いてるの?」
「んあ、聞いてたって。あの子だろ?合コンの時左端に座ってた・・・」
「そうそう、でねー・・・」
目の前に居るできたばかりの彼女。
夏休みに入ってすぐに合コンで知り合った。
小さくって、可愛くって、胸もでかい。
やっぱり女だ、と思っている。
俺は男になんか、興味ない。
後にも先にも、興味があったのはアイツだけ・・・。
―――水野 祐貴
きっと、忘れることのできない
淡い、淡い、恋とも言えない様な、そんな心を知った。
「青春、って感じだよな〜」
「何?何の話?」
「んーなんでもねーよ。行くか!俺ん家」
END
07.10.17
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