sunny place | ナノ
sunny place
20
手が、震えている。
馬鹿みたいに。
今更なんで現れたんだ、って
あんな酷いヤツの顔なんて見たくもない、って
俺の生活返せ、って
怒鳴って、怒鳴って・・・してやろうとか思うのに。
どうしようもない俺は
何よりも、秋吉が目の前に居る事に浮かれていた。
どうしようもない、馬鹿。
俺が車の助手席のシートに座ってしばらく黙り込んでいると、秋吉はエンジンをかけて、車を動かし始めた。
なんで、この車なんだろう。
本社に戻っているのなら、秋吉の車も向こうのはず。
なのに、この車は・・・・前から乗っていた秋吉の車で・・・。
「飯、でも食べに行く?」
突如降ってきた秋吉の声に、ビクリと反応して、慌てて首を横に振った。
今食べたら確実に吐ける。
目線は寄こさず、視界の端で俺の首振りを感じ取ったのか、「じゃぁ、ドライブな」としばらく車は走り続けた。
そこは、以前にも来た事のある、山の中腹の夜景スポット。
昼間だから人影も車もなく、ガランと広がった駐車場。
すこし端の方に車を停車させた。
胸が、締め付けられる。
もう、来る事なんてなかったはずなのに。
カチリ、と秋吉が煙草に火をつけた。
あまり俺の前では煙草を吸わなかった秋吉。
秋吉も・・・・緊張してるの?
開けた窓から、外に向かって煙を吐く。
しばらくそれを続けて、まだ長いタバコをもみ消した。
「廉・・・」
秋吉が、俺を見てる。
「進路、決まった・・・よな?」
「・・・・。」
「いや、・・・そんな事が聞きたいんじゃなくって・・・」
秋吉の指先が、トントン、とハンドルを弾いて・・・
一度ハンドルにうなだれて、また顔を上げて俺の方を向いた。
「俺っ、アンタの事っ・・・わ、忘れられなかった。ずっと、ずっと・・・」
「・・・。・・・悪かったと思ってる。許してもらおうなんて思ってる訳じゃない。・・・ただ、謝りたかった・・・」
「い、らない。謝罪とか、要らない。」
「廉・・・」
頭の整理なんてついていない。
何を話ししたら良いのかわからない。
言いたい事、言えてるのか不安で・・・。
「ね、ぇ・・・あんたはちゃんと俺の事、一瞬でも好きで居てくれたよね?」
「・・・・あぁ。」
「その時の気持に、嘘は無かったよね?」
「・・・・あぁ、もちろんだ。」
「なら、俺はそれで良い。」
「廉を傷つけるしか方法を取れなくて、あんな卑怯な真似して・・・でも、最後もちゃんと廉の事・・・いや、そんな事言う資格も・・・無い・・・。」
「ねぇ、教えて欲しい。ちゃんと、あんたの事」
どんな気持だったのか、どんな風に思っていたのか。
そして、今のあんたの気持。
「廉」
「俺はっ・・・・!」
やっとで見た、秋吉の顔はなんだか泣きそうな表情で。
俺も釣られて泣きそうになった。
そして、秋吉の視線を受けて、どうしようもなく体の芯が熱を持った。
「俺はっ、まだ褪せることなく・・・、憲司さんが・・・好きだっ。」
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