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sunny place
18





それから、俺は進路を変えた。

父親の勧める大学は、兄と一緒の所だった。
投げやりになって、全てがどうでもよくなって、父親の言いなりになって、生きていれば良いと思っていたのに。


急に、一人で歩きたくなった。


いや、初めから親の言いなりになっていた自分にも苛立ちがあった。
だからと言ってしたいことがあるわけでも、行きたい学校があるわけでも無かった。

上手く行かなくったってそれは全て自分の責任。

そういう意味でも自立をしていかなくちゃいけないと思った。

何より・・・初めから親に期待なんてしていないし、されてもいないのなら、好きなように我が儘を通して行くべきなんじゃないかと思った。

もっと己を出して、自分に正直に、生きたい。




急に進路を変えた俺に怒りを撒き散らしていた父親だったが、変える気のない俺を見て、最後には文句も言わなくなった。

共に、干渉もされなくなった。

こんな俺でも手の届く所に置いておきたいと思うものなのか。

父の勧める大学と大差ないのだ。

ただ、親の言いなりが嫌なだけだったんだ。


自分の選んだ大学で過ごし、自分の力で就職する。
父親が兄と同じように自分の会社に引き抜こうとも、しばらくは自分で決めた会社で働いてみたいとも思っている。


まだまだ先の話。


それでも、その中で俺はきっと何かを得れるはずだから。

秋吉の言った様に、たくさんの事を学んで成長したい。



同じように、自分が社会人になったときには・・・


秋吉の気持が少しくらい理解できていたいと思った。






「櫻田」

「桐生・・・」


「おめでとう、就職決まったって?」

「あーうん。まぁ、向こうは人数足りずに困ってたみたいだから何をしなくても入れた会社だよ・・・」


「卒業、だな。」

「うん・・・」

「桐生は、落ち着いた?」

「まぁ大学は決まったし、・・・・俺も卒業したら・・・いや、また何かあったら連絡入れるよ。」


自分が少しでも変われたときは。
そして、気持を整理することができたのなら、ちゃんと櫻田に・・・全てを言ってみようと思った。

きっと櫻田の性格だと、聞くだけ聞いてアドバイスや意見なんて言わないと思う。
それで良い、それが良い。
だから櫻田に聞いて欲しいと思うんだ。


投げやりに過ごしていたのに、ちゃんとこうやって櫻田と親しくなれた。

俺にとっては櫻田の一言が大きくて。

櫻田の一言で助けられた。


秋吉を失って、それのおかげでこうやってかけがえのない友達を手に入れた。


あのまま秋吉の元に居て

生ぬるい人生を送っていたら

きっと俺は歳をとってから後悔していたかもしれない。



辛くても、きっとそれは乗り越えることに意味があるんだと。
そう、思えるようになったのも全てほんの些細なきっかけに過ぎないけれど、甘い考えの俺にはちょうど良い経験になった。

あまりにも多くの犠牲を払ったけれど、それも自分。

後悔して、思い出してへこんでみても、過去は変えることなんてできないのだから。

失った物を、壊れた物を、元に戻す事なんてできないけれど、また築いて行く事ができるものもたくさんある。



卒業までの日々を、今更ながらに大切に過ごしたいと、そう思えるようになれた。





ありがとうと・・・言いたい。



漠然と、そう思って空を見上げた。





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