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sunny place
17





吐き気の治まった櫻田と一緒に帰宅して、最後にまたありがとうと伝えて別れた。


家に帰り、冷静になって考える。


秋吉に嫌われていたわけではなかった。
少なくとも、そう感じてたし、疎ましく思われていたのならきっと体の関係は続かなかっただろうと思う。

最後に、最後に・・・・

秋吉は、なんて俺に言ったっけ?


“色んなことを学ぶべきだ
縛り付けておくわけにはいかない

お互いの為にも・・・”


そう、言った。

言われた。

お互いの為?


俺の為?


秋吉の家に入り浸って、ヘタすりゃ学校にだって行かなくなっていただろう。
そんな俺を心配した?

良いように・・・

考えすぎかもしれない。

でも・・・あの時。



“少なくとも、俺は廉のこと・・・こうやってペアリングを嵌めたい、と。・・・それなりの意味で想っているんだが。”


閉じ込めていた記憶から、蘇ったあの時の、あの言葉。

嘘なんかじゃ、無かったよね?

じゃなきゃ、ペアなんて・・・考えられない。

こんな俺が、男の俺が・・・もらえる物じゃない。



部屋の入り口で、崩れるように座り込んだ。
秋吉の本心は秋吉にきかなくちゃわからないけど、でも。
最後の別れの言葉も本当なら、きっとこの指輪も本物なんじゃないかと思う。

指輪を貰ってから別れるまでに秋吉が俺との別れを決意したとしても、この指輪を嵌めてくれた秋吉は本気で俺のことを思っていてくれたんだ。きっと。

その気持があれば、俺は一人でもこの自分の思いを抱えて生きていける気がした。

いつまで経っても抜け出せないかもしれない。
結果、そうなったとしても、それも俺だ。

自分自身を、ちゃんと認めてあげろって・・・事だよな?櫻田。




秋吉と別れて、初めて泣けた日だった。




馬鹿みたいに、身体の水分を使い切りそうなくらい涙が止まらなくって。
勉強もせず、食事も取らず、ただただ泣いた。

次の日はきっとすごい顔だっただろう。
幸い休みで一日を部屋で過ごし、深夜そっと家を出た。



秋吉の、マンション。


最後じゃない。

きっとこれからも見に行ってしまうと思う。
それが俺にとって辛い事なのか、支えになることなのかなんとも言えないけれど自分のしたいようにしてみようと思った。



秋吉のマンションを見上げる自分が今までとは少し違って・・・

欲しい。

秋吉が。


あの、眼鏡の奥から全てを持っていかれそうな強い瞳で見つめられたい。

そう、こんなにも・・・秋吉が欲しくて、たまらない。

最後の電話で、もっと縋ってみたら、もっと自分の感情をぶつけていれば。
“奇麗事”そう言ってしまった俺は・・・自分からも、秋吉からも言葉を奪ってしまったんじゃないか?


好きだと、言えたかもしれない。
言ってくれたかもしれない。




―――束縛している責任は俺にもある

―――会いたいなら会いに行く。だから、自分の時間も大切にしてくれ

―――犠牲になるのは俺でいい



いつだって、秋吉は

そうやって俺のことを考えていてくれたのに。


俺はまだまだ未熟で、秋吉のようなしっかりした考えも無くて、決断さえもすることができなかっただろう。
別れの言葉を秋吉が言ってくれて、良かった。

きっとあのままだったら、俺は秋吉の足手まといにしかならなかっただろう。

ちゃんと、秋吉のような人間につりあうだけのヒトになりたい。



これからの


自分の為にも。





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