sunny place | ナノ



sunny place
15






トイレで、洗面台にへばりついて吐き続ける櫻田。

その姿を、後ろから眺めてた。

隣の洗面台で、櫻田で汚れた自分の手も洗い流した。


しばらくしても一向に顔を上げれない櫻田。

一体彼に何が?

いや・・・・俺か。

俺に対する拒絶反応?


「大丈夫か?」


今更、心配なんてされたくないだろうけど。
顔を上げた櫻田は腕だけ俺に寄こした。

「委員ちょ・・・腕、解いて」

「あ、あぁ」

水道水で濡れたネクタイは結び目がなかなかほどけなくて、痛みで櫻田の顔も歪んだ。

ネクタイの痕が、くっきりと櫻田の手首に付いていた。



「・・・・代わり、って・・・俺もその指輪の人の代わりなのか」


いつ、見られたのだろうか。


「―――・・・そうだ。」


何かを口にしようとして、またこみ上げてきたのか、洗面台に顔を沈める櫻田。

「何で、吐くの。そんなに俺にヤられんの嫌だった?」

「違う・・・けど、・・・委員長には、関係、ないからっ、」

関係ない、か。

所詮、東間以上にはなれないと、そう面と向かって言われたようなもので。
判っていたけど、関係ないといわれればそれなりに傷つく。
偽物だとしても櫻田には感情があったから・・・。


「そう・・・。・・・櫻田は東間篤と離れてて平気なの?」


胸が・・・痛かった。

胸に下げられた指輪が重かった。

離れただけじゃなくって、俺には心も置いて行ってはくれなかった。

たった一つ、残されたのはこの指輪だけで・・・

いっそ、忘れる事ができるのなら、と言いながら、必死に小さなリングに縋って。

これも捨ててしまうべきなのだろう。

全て、終わりにしないと。

判っていたのに、できなかったのは、俺の弱さ。

これを捨ててしまえば、俺には何も残らないから。

これだけ、だった。

俺にはこれしか無かったから。


「東間篤はもう櫻田の事、忘れているかもしれない。忘れてはいなくても・・・もう想いは薄れている可能性だってあるんだ」


「そんなの・・・わからないよ。それに、薄れてたって忘れられてないなら、それだけで十分なんだ。」


「―――っ、そんなの!・・・・・なんで、そんな風に思える?」


秋吉は・・・?
秋吉はきっと俺のことなんて、忘れているに決まっている。


「俺には東間しか居ないから・・・・。それだけ・・・だよ、関係は友達だって、知り合いだって良いんだ。俺の存在か東間の中にあるだけで・・・」


「欲は、嫉妬は!あるだろ、そんな綺麗事で済まされるもんじゃない!」


「欲も、嫉妬も全部持ってる。それを出した所で全て悪い方にしか事が進まなかったんだ。望んでっ・・・駄目なら諦めるしかないだろう?自分が傷つくのを最低限に収めるしか方法を知らない・・・。」


小さく、息を吐いて、櫻田は少し切なく笑った。



「怖いんだ、東間に捨てられる事が。」



視界が、歪んだ







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