sunny place | ナノ



sunny place
13






「―――なんの、つもり」

「櫻田が欲しいだけなんだ」


何としてでも手に入れたい・・・と
俺には櫻田が必要なんだと勝手に思い込んで、意固地になって・・・



わかってる、これじゃ、駄目だって。



それでも俺は戻れない


そっと櫻田の唇を奪おうと顔を寄せれば、さっと避けられ、以前と同じように、白く映える首筋。


一途で、素直な櫻田


馬鹿みたい。


馬鹿みたいなのは・・・・俺、か。


苛々する


「唇は・・・・ダメとか?・・・・・馬鹿らしいね。」



苛々する


「やめろ」と、誰かに止めて欲しい。



櫻田を押し倒せば、机が大きな音を立てた。


「愛だとか、くだらないと思うんだ。そんな脆いもの語るの馬鹿らしいとか・・・・思わない?」



「何・・・・言ってんの」


「独り言だよ。」


「泣きそうな、顔で言う事かよ・・・委員長」




「泣けたら、楽だったのかな」




櫻田の言葉に、体の芯から冷えるような感覚と、同時に苛立ちが駆け上がってきて、出口を求めたそれをそのまま櫻田にぶつけた。

平手で打った割には思ったよりも力が入っていたのか、上からの振り下ろしたからか、大きな音を立てた。
そして、直後から赤く反応を示した櫻田の頬。

そこに唇を落とせばほんのりと熱くって・・・。


「ごめん。痛かったね。」


薄っぺらい謝罪の言葉を吐いて、櫻田に口づけた。

頑なに拒む櫻田の口を指でこじ開けて、そのすき間に舌をねじりこんだ。
柔らかく、熱い舌を吸い、追いかけて・・・・舌を噛み切られたって構わなかったのに、櫻田は嫌がるそぶりは見せても歯を立てては来なかった。

どこまでも、誰にでも優しいであろう櫻田。


「俺を、選んでよ。」

「イ、ヤだ。」


「・・・そんなに、東間篤が好きなの」


櫻田の瞳が、大きく見開かれた。


「全部、知ってる・・・・高屋恵生だったって事もね。私生児で、売りの噂が流れてこっちに転入。東間篤とそれなりの仲だって事も。」

「な・・・んで・・・」

掠れた櫻田の声が俺の中で響いた。

驚きと恐怖。
その二つを持って俺を見つめる櫻田。



あぁ―・・・やっぱり俺には何も手に入れることができない。



判っていたけど。
望む事すら、もうするべきじゃないんだ。
もう、俺はこうやって人を傷つけることしかできない。

なら・・・最後で良い。

櫻田を最後に傷つけて、終わりにしよう。



櫻田の過去を知った経緯を話して、なお更櫻田の瞳には怒りが湧いたようだった。

そうやって俺を憎めば良い。

俺は痛くも痒くもないんだから。


「俺のこと・・・・知って、どうするの。お前に何の利益もないだろ」

「利益?・・・・十分、使えると思うけど?」


笑いながら櫻田の耳に舌を這わせる。
ピクリと肩が揺れるのも面白かった。


「今の学校で・・・同じように、ビラでも撒こうか?・・・・また転入する?二度目の転入できる?この時期に。」


脅して手に入れたところで、心までも手に入るなんて思ってない。
もう、櫻田を手に入れるかどうかなんて・・・

どうでも良かった。





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