sunny place | ナノ



sunny place
11






「櫻田、終わってからちょっと時間もらえないかな?授業無いし、急いで帰ること無いだろ?」

夏休みの日々を悶々と過ごして、とりあえず一度は櫻田に正面からぶつかってみようかと言う気持になった。

櫻田を呼び出して何を言うかなんて考えてもいない。
二人で向かい合ってから、出てくる言葉を伝えるだけだ。
考えたって、俺の気持も不純なものなのだから、考えようが無かった。

でも、俺は櫻田と近い存在で居たかった。

それは恋愛感情とはいえなくて、それに近い物でしかなかったけれど。

離れて欲しくない人を繋ぎ止めておきたい、ただその感情が強かった。


―――その頃の俺は確かに何かが欠けてた。
そんな無理強いしたって駄目だってことに気付かずに。
友達と言う、確立された存在があるということに気付かずに。
必死、だった。


櫻田を呼び出したのに、担任に使われて待たせてしまうことになったが、むしろ良かったかも知れない。
始業式ということもあって、さっさと皆帰ってしまったのか、教室に向かう廊下では誰ともすれ違う事が無かった。

そっと、開いた扉から見えたのは

櫻田が空を見上げている後姿。

それが初めて彼を見たときと重なった。

きっと櫻田は空が繋がっていると、彼と・・・東間と唯一の繋がりだとでも思っているのだろうか。

俺には、その姿が

秋吉のマンションを望む、自分の姿と重なって、酷く苛々した。

勢いに任せて、扉を空けると驚いて振り向く櫻田。


「ゴメン、待たせた。」

「いや・・・」

「暑いのに窓開けっ放し?」

「ん、ちょっと外見てたから。」

「何か面白いものあった?」

「いや、別に。・・・・ってか話って?」

「うん・・・」



一呼吸置いて、出て来た言葉は

「櫻田、付き合おう、俺たち。」


「・・・え?」


自分でも笑ってしまいそうになった。
そんな無茶な、って。

でも、そんな空を眺めるよりも俺を見て欲しい、なんて思ったりして。


「え?じゃなくってさ。どう櫻田・・・俺の勝手だけど、少しは俺に気持・・・・・なかった?」


俺に、東間を重ねてみてただろ?
あの熱い視線は、間違いないだろ?
俺の手で、東間を思い返しただろ?


判っていたけど

櫻田の答えはもちろん「ノー」だ。

俺に申し訳ないとでも、思っているのか下を向いた櫻田に近づいた。

「そんな考え込まないで。」

「っ、ちょ、委員長、近い。」

俺を撥ね退けようと胸に置かれた、その手の温もりがじんわりと伝わって・・・

「わっ、待てって!」

「そんなすぐには諦められないよ。」


唇を奪おうと近づくも、あっさりと顔を背けられ露になった白い首筋にそのまま唇を落とした。

しっとりとしたその肌が

櫻田の体温が恋しくて

舐めるだけでは足りない俺はそのまま歯を立てた


「―――あっ、く、痛!」


かすかに感じる鉄の味にそのまま舌を這わせると


「―――と・・・」


喘ぎとも言えぬ、その声は確かに“東間”と言おうとして、慌てて口を押さえる櫻田。
そして上がった体温。

火照った肌が、色っぽかった。


「少し、血にじんじゃった。痛かった?」

「・・・なんか、委員長性格違うくねぇか」

「これだけ誰かに執着するのは久々・・・だからかな。」


上手く、笑えている気がしない。


「ごめん、でもまだ諦めきれないから。もう少し押させてもらうよ。迷惑だろうけど、ね。」


そう言って櫻田をそのままに教室を出て静かな廊下を歩くと、孤独感をいつもよりもひどく感じて、苛々した。


俺は彼の名すら呼ぶ事さえできないんだ





prevbacknext




[≪novel]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -