sunny place | ナノ
sunny place
10
夏休みは退屈だ
櫻田に会うこともできない。
櫻田に嫌がらせのメールを送った所で櫻田からはなんのアクションも無ければ、会わないから状態さえも把握できない。
夏季限定のバイトして、空いた時間で勉強して。父親の勧めで予備校に通って・・・。
煮詰まる。
暑さのせいもあってかストレスが溜まっているのがわかっていたけど、それをどうして良いかわからない。
誰かを抱いて、抱かれて発散しても良いけど、どうしても次の日になんとも言えない感情が湧く。
人肌を求めるのは寒い季節の方が良いのかもしれない。
温もりが安心できて。求めると言う事と、発散するのとではちょっと違うんだな、って思った。
冷房の効いた電車に揺られ、扉に頭をあずける。
今日もまた久しぶりの集まりで。
夏休みと言うこともあって少し多い人数で“同窓会”をする。年始に一度やったきりだったからお知らせのメールもテンションの高いものだった。
そんな友人のメールを思い出し苦笑しながら電車を降りた。
同窓会は夕方からで少し早いが連れの家で時間を潰そうと駅から北へ向かって歩く。
ちょうど駅前の賑わいから離れ、住宅街に差し掛かったところで、見慣れた人物を見かけた。
まさか、と思ったものの、見間違えるはずが無い。
「櫻田!」
顔を上げた櫻田は驚いていた。
そりゃそうだろう。こんな離れた土地でクラスメイトに会うなんて思いもしない。俺だって驚いているんだから・・・
夏なのに、焼けていない白い肌。
どんな風に、抱かれるんだろうか。
きっと熱で赤く染まるんだろう。
いつの間にか、そんな風に櫻田を見てしまう。
会話をしててもそんなことばかり考えて・・・
綺麗な、一人の人を見つめて、汚されない体。
それに比べて――――
自分を汚したのは
紛れもない自分自身じゃないか
「櫻田、時間あるならお茶でもしない?待ち合わせまで1時間くらいあってどう時間つぶそうか悩んでてさ。」
「・・・ごめん、俺これからバイトだから。」
「あぁ、そうか引き止めてゴメン。また新学期な」
良い。
一度も会えないだろうと思ったこの夏休みの期間に会えて話しができたのだから。
櫻田の頭に手を置けば、あの時の保健室での触感と同じもの。
そして、突如湧いた櫻田に対する羨望の気持。
思いたい、思われたい。
心が・・・・ ・・・欲しい。
離れていても、繋ぎ止めておけるだけの
何か。
櫻田にはそれがあって、なぜ俺には無かったのだろう。
そして櫻田は決して俺の懐に入ってこない。
あくまでもクラスメイトでしかなかった。
なぜ、頼れる場所を作っているのに、頼ることもしないのか。
櫻田を手に入れることはできないのだろうか
やっぱり自分には、何かが欠けているのだろう
こんな欠落した人間に
だれも魅力なんて感じるわけが無い
なら、力ずくしか、ない?
どうして良いか、わからない。
どうやったら人の気持が自分に向けられるのかわからない。
羨む気持から生まれた物は
考えれば考えるほど、憎しみに似た
醜い物が生まれていった。
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