sunny place | ナノ
sunny place
08
それからの俺といったら、櫻田恵生を目で追って。
どうにか接触できない物かと考えていた。
なかなか機会も無い上に
相手はあまり人と接触をしない。
友達を通じて、というのも無理な話だった。
なのにそれは簡単に解決した。
3年に上がると櫻田と同じクラスになれたのだ。
そして2年に続いて任された委員長と言う立場。誰もが敬遠する立場に経験者だからと推薦され、そのままズルズルと委員長になったが、それがちょうど良かった。
だれともつるまない櫻田の面倒を見ているかのように、そんな“委員長だから”という振る舞いで彼に接触を図った。
徐々に櫻田の中に入っていくように。
時折見せる“拒絶”の顔色も気にならなかった。
元からこういった接触は苦手なのかもしれない。
なら
なお更。
東間がお前を思い続けているとは限らないのだから。
少しでも外を見ろと。
すれば、傷は浅いだろうから。
始まりはそんな心配するような感情からだったのに、いつからか・・・
そう、櫻田の目が・・・時に俺を見ながら誰かを重ねているような、そんな視線に歯車が違う方向へ回り始めていった。
俺で良いのなら、俺にすれば良い
それが、代わりであったとしても
そんな考えが浮かんでからは
櫻田をどう振り向かせるかに必死になっていた。
同時に離れていった温もりを俺もまた手にすることができればと・・・それが櫻田と同じ“代わり”であっても。
離れていく恐怖を思い出せば竦んでしまいそうになる自身をどうにか保って。
全てがギリギリの精神だった。
次、踏み外せば
きっと俺は、
ふぅ、と息をつき
数学の教科書から視線を上げる。
背筋を伸ばすと、コキッと骨が鳴り、筋肉がほぐれる。
横にあった携帯に手を伸ばし、時間を確認して
何気にアドレスから櫻田を呼び出した
3年になって大体のクラスメイトとアドレスを交換した。乗り気じゃなかった櫻田のも、ほぼノリだと見せかけて手に入れた。
ふっと浮かんだ、櫻田の過去。
一度だけ写真で見た東間の姿。
必死だった。
どんな手を使ってでも、振り向かせたい。
櫻田を東間から離したい。
ノートと教科書を適当に重ね入れ替えるようにノートパソコンを引っ張り出す。
フリーメールを手に入れて、宛先には櫻田のメルアド
“高屋恵生、名前を変えても学校変えても逃げられないよ。”
過去の呪縛に恐怖を感じ、絶望を感じ
今、一番傍に居る俺を頼って来い。
そうすれば甘やかして、俺の色に染まるまで離さない。
体を使って、東間を忘れさせてやる―・・・。
自分でも、恐ろしい事をしていると。
でも、もう暴走する自分を止める事ができなかった。どうやって人を振り向かせれば良いかなんて、人に対しての優しさなんて、思い出すことも考える事もできなかった。
狂った俺は
卑怯な手を使ってでしか、動けない。
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