sunny place | ナノ



sunny place
07





「おぉ、久しぶりだな桐生。」

友達の家に上がり込めば旧友がすでに集まっていた。

中には仲間同士で同じ高校に上がった奴等も居て、引っ越して離れてしまった俺だけが“久しぶり”と言った感じなのだが、そうやって集まる機会を作ってくれるだけでもありがたいと思う。

「久しぶりって・・・ついこの間、集まった所だろ?」

「えーっといつだっけこの前・・・」

「年末・・・じゃなかったか?アレ?一ヶ月経ってるか!?」

いつも集まるメンバーは俺を入れて6人。もうちょっと大きな同窓会らしい事をするときはカラオケボックスに15人近く、男も女も混じって集まる。

すでに来てた奴が買出しに行ったらしく、部屋にはお菓子やジュースが広げられている。

何をするわけでもない。酒を飲むわけでもない。健全な集まり。

高校卒業したら、居酒屋で集まって飲もうと言うのが俺らの計画。一度家で飲んでたら親に見つかって諸共叱られた事があった。


学校が違えば行事ごとも違って、そんな話で盛り上がる。進路の話しをまじめにしてみたかと思えば男6人も集まれば女の話から下ネタにまで及んだりもする。


「桐生は?最近どうよ?」

「俺?まー・・・なんだ勉強に力入れてるくらいかな。」

「あーそういや兄ちゃん頭良いんだっけ?今同じトコ通ってるんだよな?」

「―・・・ああ」

「お前も向こうで兄ちゃんみたいに一人暮らしとかするかと思ったのに一家そろって引越しだもんなぁ。」

「まあな。俺が通うからとかじゃなくて以前からあっちに越す話しは出てたんだよ」

「桐生が一人暮らしなら集まりは桐生ん家に電車乗ってでも皆行ったのにな。酒持って」

「結局それかよ、そうなったら断ってたな」

溜まり場に自宅を使われるなんてとんでもない。

でも、一人暮らしをしていたら・・・少しは家が落ち着く場所だと思えただろうか。できることなら、してみたかったものだ。




「そういや、こないだ転入生が来たんだ。こんな時期に。引越しかと思ったんだけど電車通学らしいんだよな。寮にも入らないで・・・」

沈む思考を持ち上げようと話題を振る

「え?この時期に?・・・ってうちの学校から2学期の終わりに学校辞めた奴居たぞ、案外いるんじゃね?
うちの奴はなんか居ずらくなってー・・・って感じの辞め方だったけどな」

「おいおい、イジメかよ」

傍観してた奴らまで話しに食いついてきた。


「ちげーよ、多分。まぁイジメの対象になりうる奴だったんだけどさ。イジメにまで行かなかったな。なんか冷めた奴で。

アレよ、愛人の息子って奴。ニュースになった事件と関係あってさ、すっげー居ずらかったハズなのにちゃんと学校来ててさ。周りがどんな噂してようが平然としてたぞ。」

「すげぇ神経してるな。俺なら耐えられないわ」

「お前は弱えーもんな」

「ひっでぇ」

「で、なんで辞めたのそんな奴が」

「ウリの現場写真取られてソレばら撒かれたの。」

「わ、きっつー」

「いや、それがどうやらデマらしいんだけど・・・そいつとデキてるって奴にも迷惑掛かるからって辞めたって噂になってる。俺も詳しくは知らないんだけどさー」

口々に皆が話し始める中、俺一人内心ドキドキしていた。
そいつの話しとかじゃなく、今この目の前に居る俺がウリをしているなんて・・・誰も想像さえしないだろう。

もし―・・・知られたら

一緒になど居られない、居てもらえないだろうな



「そいつのウリはデマだったのか?」

声がかすれそうになるのを辛うじて搾り出す。

「らしいぞ。どうやら相手は父親で一緒に居ただけ・・・とかなんとか言われてるけど確かなことはわからねーよ。俺同じクラスじゃなかったしな」

「・・・そうか。まさか同一人物だったり、なんてな」

「あはは、ならすげーな!」

「おい、桐生の方の名前は?」

「え?えーっと確か“サクラダ ケイ”だったかな」

「お?うちから出てった奴は“タカヤ ケイ”って言うぞ。」

「別人か?名前一緒だけど」

その時点でもまさか、と思っていたが
名前の漢字が「恵む」に「生きる」だと言った時に同一人物だとわかった。
一瞬息を呑んだのは俺と“タカヤ ケイ”を知る奴だけで他の奴らは面白がって騒いでいた。

「そ、そのデキてたってのは?」

―――もしも、彼の見上げた空の先にいるのが・・・

「あークラスメイトの奴でさ“トウマ アツシ”って言って。あ、男だぞ?うちの学校そういうの多いから。」

「まじー!さっすが男子校だな!!」

話が逸れそうになるのを慌てて止めた

「ちょ、まて。そのデキてるってのは本当なのか?」

「ああ。どうやらそっちはマジらしい。」

「別れたのか?そいつと。それからこっちに転入?」

「いやー別れたってのは聞いてない。ってかどっちにしろ離れたら自然消滅じゃねぇの。男同士だぜ?遊びだろ?」

彼に向けて言った友達の言葉が、自分に刺さるようだった。多分・・・いや、きっと彼が空を見上げて求めていたのはそいつなんだ。

俺も彼に共感する面があるから、だから彼に興味が湧いたのか?


“トウマ”が写ってる写真がある、と言った奴が部屋の棚から数枚の写真を出して来た。それはバスケ部の写真らしく、練習に参加していた時のものらしい。その“東間 篤”の写真をじっと見つめた。

何度も名前を頭の中で反芻させて、そして櫻田恵生、彼を思い返した。


彼もいつかは俺みたいになるのだろうか

彼も―・・・“東間”に捨てられるのだろうか

そうなった時、彼はどうするのだろう





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