sunny place | ナノ



sunny place
06


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side:廉


自分の為にも、人のためにもならないことを繰り返している。

夏が過ぎ、秋が来て、冬が来たって何も変わらない。
本心を、心の内を明かさなくったって友達とつるむ事が出来る。


そうやって人間は自分の弱っている部分を隠しながら、生きていくのだろうか。

誰かに助けを求めたいと、そう悲鳴を上げそうになる事までも隠してしまえるのだろうか。

手を差し伸べられたとしても

自分はその手に甘える方法さえ

思い出せない



求める物が見つからなくってさまよっているような、その感覚さえも最近ではなくなってきた。

全てが“どうでもいい”で片付いてしまっていた。


相変わらず、人肌を求め
来る物拒まず、去る物追わず

そんな日々だった

このまま自分は生きていくし、周りもそんな俺に気付かず生きていく。いつまでとかどこまでとか判らないけど
今は考える事も・・・どうだって良い。



そんな俺の毎日にちょっとした変化があった。
自分の身に何かが起こったとかじゃなくって


―・・・興味をそそられた、と言えば良いのか


2年の3学期にして、転入してきた奴。

興味は無かったのに、周りは興味津々で・・・嫌でも噂は耳に入ってきた。


彼―・・・櫻田 恵生(サクラダ ケイ)はいつ見ても、表情が無い、というよりはあまり表情を出さないタイプのようだった。
新入りだから、と回りに媚を売るようなこともせず・・・むしろ周りを必要としていない。

なのに、一人で下校している時には・・・空を見上げ、何かを思う。

その表情は何かを・・・“誰か”を求めているようで

その姿の彼に吸い込まれるようだった。

同時にどこかで共鳴するような感覚を味わった。

彼なら何か、俺に変化を与えてくれるかもしれない。それが良いものか悪いものかなんて判らないけど
どこかで少しの変化を求めていた俺は、彼に興味を持った。







『桐生、いつもの会開くぞ〜!今月いつが空いてる?』


それは毎年何度も行われる仲の良い友達だけが集まっての同窓会。
同窓会、と言うよりはただの集まりと言った方がふさわしいかも知れないが。中学までは同じ県でも違う市に住んでいた俺。その頃の友達が高校で皆がバラバラになっても遊ぼう、と言う誘いから始まったもの。


「いや、今月はいつでも空いてるからそっちで決めてくれて良いよ。決まったらメールしてくれれば。」

『そうか、じゃ勝手に決めるわ。家は毎度のこと俺ん家な!』

「了解〜」

携帯を閉じるとそっと机の上に置いた。

少しでも気の紛れる出来事は嬉しい。
自分を見つめないで良い時間がありがたい。
無理して笑顔を貼り付けて愛想を振りまく必要のない旧友との予定は待ち遠しかった。







もう何冊目になるか判らない問題集。目の前の何も変わらない毎日の繰り返し。飽きるという感覚さえもなくして・・・


目線を窓の外に向ければ、夜になってから降り出したらしい雪がうっすらと積もっていた。きっと明日になれば、今積もっていた事さえも気付かれずに、もしくは忘れられて、跡形もなく消えているのかもしれない。


机のライトを消すと、クローゼットから厚手のコートを引っ張り出し

それを羽織って静かに、家を出た。


白いそこに自分はちゃんと気付いているから、とでも言うように足跡を残して

そして自分もひと時の、自分を見てくれる人を求めて

しんとした夜道を歩いていく





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