sunny place | ナノ
sunny place
05
答えが出せそうで、出ない
そんなもどかしい数式を解いているようで
解けたときには素晴らしい達成感が味わえるかどうかなんて・・・わからない。
あれから、金沢の息子の受験の話から息子の夢、金沢の老後の考えまでを聞かされた。
それは他愛のない話のようで、どこかに数式を解く鍵が含まれているんじゃないか・・・
そんな感覚で必死に話しを聞いていた。
部屋にたどり着いた時には午前1時前。
シーンと静まり返った部屋で
初めて廉に会った日を思い返していた。
支社に居ても、結局は本社に戻る日が来たんだ。
それを先延ばしにするために仕事を入れて
時間が無くなって
廉を悲しませ
廉を思って・・・
また、廉を傷つけて
結局本社に来ても支社に戻りたいと申し出たのは
何年先でも良い、廉と会いたいと・・・そう願ったから。
支社でこの先も働き続ける為に、本社で任されるだけの実績を上げたかったのだ。
全ては、廉によるもので・・・
“全てが幸せに向かうものじゃない。この人だと思って結婚したって、別れる人間もいるんだ。でも、それも選択した時点では自分の選んだ道で、そこにはきっと何かがある。終わってから判る物かもしれないしな。”
支社に置いて来たのが女だと、そして俺が別れてからこっちへ来たのだと思い込んでいた金沢。
金沢に慰められるような、そんな空気をこの数ヶ月漂わせていたのだろうか。
「終わってから、判るもの・・・か」
終わってから判る
終わってから
廉を手放した事を
酷く
後悔している
廉の人生だからとか
廉の親の事だとか
変に勘ぐって
離れることが一番良いのだと言い聞かせた
もっと良い方法があったかもしれないのに
ひとっつも浮かびもしなかった
本社に戻る時間との狭間で
俺は間違った選択をしたのか
無理をしてでも
多くの犠牲を残してでも
繋ぎ止めておくべきだったのだろうか
それには、俺の自信が・・・足りなかった
愛し続けることじゃなく
多くの犠牲を伴う恋愛に
そして、廉の若さに・・・
支社に、戻るのだから
これからのことは今の時間を使って考えれば良い
廉に許してもらおうなんて思わない
たとえ結果がどうであれ
もう一度廉に会いたい。それだけだ。
言えなかった、たくさんの言葉をひとつでも伝えたい
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