sunny place | ナノ



sunny place
04





side:秋吉


最後まで、言えなかった言葉がある
それは俺の中で俺自身が思い続ければ良い

彼を・・・廉を、束縛するわけにもいかなかった

結局、廉には辛い思いをさせて
俺を忘れられないかもしれない

それでも

それで

良いと思ってしまう俺は・・・・


「秋吉さん、2番に○○からお電話入っています」

「はい」

本社に戻ってきて、結局以前と変わらず・・・いや以前以上に仕事人間になった。
それしかなかった。

忘れられないのは・・・俺の方かもしれない。

廉は今頃彼女でも作っているかもしれない。


寝ても冷めても、廉を思い出し
女を抱けば廉に重ね
女と気付けば不能になる

そんな自分を笑って・・・


「はい、では来週お伺いさせていただきます。えぇ。分かりました伝えておきます」

電話を切り、気分転換にお茶を貰いに給湯室へ向かう。
給湯室の前で喋っていた金沢と女子社員。その横を通り過ぎようとして、止められた

「秋吉、A社の話しだが今日いけるか?」

「あ、ハイ。空いてます」

「じゃ、そう言う事で塚本さん、俺と秋吉とA社行って直帰だとボードに記入しててくれないか?」

「会社に戻ってこないんですかぁ?って・・・飲みに行くんですね〜」

「あはは、バレバレだなぁ〜。行けるだろ?用事でもあったか?秋吉」

「大丈夫です」

断る理由もない。
帰宅したところで酒飲んで寝るだけなのだから。







「どうだ」

「どうだ、って・・・・」

金沢の行きつけの店で今日もおでんをつつく。

「こっち帰ってきて、どうだ?」

「え?・・・まぁ普通ですよ。以前と変わらず・・・」

「向こうに何置いてきたんだ?」

金沢は変な所でやけに鋭い。

「余裕が無いぞ、秋吉。」

「どういう・・・意味でしょう」

「仕事人間に逆戻りしている・・・そして小耳に挟んだんだが―・・・支社に戻る手続き、しているそうじゃないか」

「っ、何でそれを!」

驚き戸惑う俺を・・・それが酒の肴だと言うように面白そうに酒を口にした

「戻りたいのか、向こう(支社)に」

「・・・・。・・・・自分でも、よく分かりません。でも支社で働き続けたいと思ったので申し出てみました。今すぐには無理ですけど。一年後くらいをめどに。・・・あとは俺次第ですかね。ある程度こっちで成績残さないとダメですよね、きっと。」

「無理してでも戻るのは良いかもしれないな。」

「え?」

「秋吉の生きがいってなんだ?何のために働いて給料を貰っている?・・・あるだろう、色々。俺は家族だ。嫁さんが居る、息子が居る、そしてそれを守るために働いている。息子の生きがいは・・・友と音楽、だと言っていた・・・」

「生きがい・・・」

「そう、給料貰って・・・それで車を買うこと、とか・・・あるだろう?無くとも、将来良い嫁さん貰うための肩書きの為に働いてる・・・とかでも良い。」



「―――・・・俺には、無い・・・ですね」


水割りの氷が溶けて、カランと心地よい音を出した。





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