sunny place | ナノ
sunny place
16
それから秋吉と俺との間でそんな話が増えていった。
俺の進学についてとりあえず勉強はおろそかにしない、という約束のもと秋吉の家に泊まる事を許されたりしていた。
まだ高校生だから仕方ない、と自分に言い聞かせて。
「えっ、そんなに!?」
「・・・・あぁ」
久しぶりに出張、と言い出したと思ったら
本社に2週間と言う今までで最長の出張だった。
「仕方、ないよね」
「電話もメールもするから」
「うん。無理しないで」
送り出すしかないんだ。俺が会社の事で口を出す事なんて出来ないから、諦めることは早い段階からできるようになっていた。
本社に向かってから3日目。
秋吉から電話もメールも入らない。不審に思いつつもこちらから電話して接待中だったら、と思うとできなくて。
その日の夜中に、メールを送ってみた。
深夜だったら接待とかじゃないだろう?
“すまない、忙しくて。あまり遅くまで起きてるなよ”
どこまでも大人な返答。
泣きたくなった。
少しくらい、俺を求めてくれたりして欲しい。
あの、初めのような独占欲はもう無いのだろうか
“人恋しいよ”
そんな馬鹿げたメールも送ってしまう。
“あまり困らせるな。疲れているから寝るよ。”
俺以外の奴に足を開くな、と言ったのはあんたなのに。もう、そんな風に思ってくれないの?
疲れているせい?
好きだとか
愛してるとか
まだ一言も貰った事が無いんだ
指輪がそれを語ってくれてるんだと
そう思い込んでるのは
俺の勘違い?
言葉なんて軽いものだからと自分に言い聞かせてきた。
なのに離れている時はその言葉を酷く求めてしまう。
一度も、俺を安心させてくれた事なんて、ないよ。秋吉。
夢のような幸せを感じたのは一時で
ずっと、ずっと心はざわついているんだよ。
走っても走ってもたどり着けない
そんな夢を見た。
俺は、何処へ向かっていたのだろうか・・・
◇
“明日こっち帰ってくるよね?何時の新幹線?”
出張から帰ってくる前日の、お決まりのメールを送る。返事はすぐに届いた。
午後5時過ぎの新幹線だと。
いつもその時間から計算して秋吉の家へ出向く。が、今回は期間も長かったせいか、積もり積もったものがあった。
そんな俺の翌日向いた足は秋吉の家じゃなくて新幹線の駅。
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