sunny place | ナノ
sunny place
15
side:廉
秋吉が頻繁に本社へ行き来するようになった。
社会人の事、仕事の事、話をされても半分ほどしか理解できていなかったけど。元は本社の人間だった、と言う事は聞いていた。
「また、本社?」
「そうだ。」
「今回も長いの?」
「いや・・・そうだな今回も4日ほどあっちだ。」
本社のある県に秋吉の実家もあった。本社に帰るときは実家に泊まっているらしい。
秋吉には言わないけど、本社と行き来しているうちに、こっちのマンションの物が減っていく。それには気付いていた。
本当に最低限の物しか残っていないマンションを見てはため息をついていた。明らかに仮住まいのようなその空間。
それでも俺は秋吉の帰りをひたすら待つしかない。
「廉、将来の事とか考えることあるか?」
「将来?なにそれ、親みたいなこと言うね。」
「大学、出るのか?」
「何も考えて無いけど、親は出ろって言うだろうなぁ」
それなりに世間体もあるし。
俺に期待が掛かっていなくてもそれなりのところは出るべきだと思っているはずだから。
「ちゃんと考えてるか?」
「やめてよ、そんな事言われたくないよ・・・」
「・・・・いや。こうやって束縛している責任は俺にもあるからな、それで廉の将来が駄目になったりしたら・・・」
「そんなの、たとえそうなっても!あんたのせいじゃないよ!ってか、そんな親みたいなこと、言うなよっ。」
秋吉は俺の安らげる場所であってほしいのだ。
唯一の場所だから。
「すまない」
「・・・俺、ウザイの?連泊しすぎ?・・・わかんないから。あんたが俺のこと疎ましく思ってても、俺気付かないフリ、しちゃうから・・・ちゃんと言ってよ」
「廉、そんな訳じゃない。高校生の時ににしかない時間を無駄にして欲しくないだけなんだ。」
熱い緑茶が冷めていた。
ぼんやりとその湯飲みを眺める。
「俺はあんたと一緒に居れればいいよ?」
「それが―・・・」
秋吉の負担になってるの?
俺の心配なんて要らないのに、そうやって言う事で俺に諦めさせたいの?
「うそなの」
「何」
「指輪。嵌めてくれた意味は・・・ただの飾り?ただのプレゼント?」
「違う、廉。ちゃんとそれだけの思いがあるって事を・・・」
なんでこんなに気まずくなってるんだろう。出張が多くなって、少しでも一緒に居たいって・・・ただ思うだけなのに。
高校生と社会人ではこんなにも温度差があるのか
俺はまだまだ幼いんだって、言われているようだ
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