sunny place | ナノ
sunny place
11
「家は大丈夫なのか」
「俺が居ても居なくても気付かないよ」
「学校は」
「行くよ、昼から・・・」
秋吉が呆れていた。
秋吉の気持がわかってから、俺も自分を抑えることなく、秋吉を求めて・・・
秋吉の家で過ごす事が多くなってきた。
もちろん、迷惑にならないよう出来るだけのことはした。掃除に、不慣れな洗濯に料理。仕事が忙しく帰宅も遅かったりしたけど、ひと目見れればそれで満足だなんて
そんな尽くしている自分にも驚いた。
秋吉は仕事が忙しくなってはいたが、年末から引き続き出張が多くなっていった、それがなお更一緒に居たいと思わせて、帰ってきている時は時間の許す限り傍に居た。
「廉、いい加減・・・・。」
「――――、迷惑なら帰る。」
「迷惑じゃない、廉が心配で・・・そんなに家に入り浸らなくても、廉が電話欲しいなら電話する。会いたいなら会いに行く。だから、自分の時間も大切にしてくれ」
他の事に目もくれず、秋吉ばかりになっている俺にそんな事を告げた。
「気持が、繋がって嬉しいんだ。少しでもアンタと居たい。それだけじゃ駄目なの」
「駄目じゃない、でも犠牲になるのは俺でいい。学校もちゃんと行きなさい、家にもちゃんと帰りなさい」
アンタ以外どうだって良いのに
そう言ってしまおうかと思ったけど、重すぎると思ってやめた。
だって、また来週からは出張じゃん
今週は一緒に居たいんだ・・・・
「わかった、今日は帰る。」
「送ってく」
「要らない」
「拗ねるなよ」
「・・・・アンタにとって―――、・・・・なんでもない」
つくづく秋吉の発言によって思い知らされる、自分の幼さ。所詮、同じ位置に立てる事はないんだと。
同等でありたい、そう願ってしまうのは何なのか。
“仕事の出来る社会人”・・・秋吉に対する、嫉妬のような憧れ。もどかしい自分。
マンションを出て、しばらく歩いてマンションを見上げる。会社の持ち物のマンションだと、こっちに赴任してきたという秋吉。
こんなところで1人暮らしの出来る秋吉
まだまだ親の手の内にしか居れない俺
互いの気持が繋がっても
1人になってしまえば、結局以前と変わってないような気もする。
結局俺は何かと不満を抱いて、秋吉はそれを判っているのか判っていないのか、以前となんら接し方は変わらない。
薬指に嵌められた指輪は、恥ずかしさもあって年明けからは革の紐で胸元に吊るされていた。
それを服の上から押さえて、心を落ち着かせる。
そんな動作が癖になりつつある自分にも嫌気が差した。
それからしばらく、秋吉の家にも行かない、会わない日々を過ごした。所詮子供なんだろうと思う、自分は。
意地になって、少しでも秋吉に求められたくて試して・・・何も変わらない、良い結果なんて出ない。
判っててもやってしまうあたり、本当に盲目になりつつあるのだろう。
家に居たって、俺の存在なんて薄いもので。
秋吉に見てもらって初めて自分は存在があるんじゃないかとか、思ってしまう。
家に居る時は静かに過ごし
秋吉が出張に出た頃に、秋吉の家へ行った。
「やっぱり、馬鹿だな」
秋吉はもちろん居ないのに。
こうやって忍び込んで、ベッドに沈んで秋吉を想う。それだけで十分だった。自分の部屋のベッドなんかより、かなり良い。
こんなに深く人の事を想ったことなんて無かった。
何が違うんだろう
なぜ秋吉なんだろう
いつか、俺が秋吉に近づけること、同等に扱ってもらえる時は来るんだろうか。
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