sunny place | ナノ



sunny place
08




それからズルズルと、秋吉とのこの変な関係は続いていた。
夏が終わり、秋が来ても変わることは無かった。

言葉のない、体の関係。


何度も胸を痛めたこともあった
俺の求める物は何なのかと。
言葉なんて、この際無くたって良い。
秋吉の隣に居ても良いという確かな何かが欲しかった。


学校で授業を受けていると
秋吉は今仕事をしているんだろうと想像して
あまりにも自分と立場の違う相手に切なくなった

遠すぎるのに、近すぎる関係

体とは裏腹に気持がバラバラ


どうしていいかわからなくなると、秋吉に会いたくなる。会って、求められて安心したい。
週一回だった訪問は少しずつ回数を増やしつつあった。


昼休みに“今日、行くから”とだけメールを送る。
それも俺を守るためのもの。

秋吉に女がいるかもしれないから・・・。

推測でしかないけれど、俺のような高校生を相手にするような人じゃない。ましてや良い歳だから身を固める事も考えているだろう。

行く事をメールするのは女を連れ込んでいる日に俺が知らずに扉を開けたくないから。ただそれだけ。


しばらくして返って来たメールには、今日は仕事で遅くなるから会えない、と書かれていた。


俺が訪問回数を増やし始めた頃と比例するように秋吉の仕事は忙しくなり、残業が増えていった。
無理して会ってもらった事が一度あったが、疲れていた秋吉は口数少なく、俺を抱く事も・・・キスさえも無く、少し顔を見て終わった。

本当に、残業なの
俺がうっとうしくなったんじゃないの


それからは秋吉に無理を言わなくなった。

所詮、俺は性欲処理でしかないのかもしれない、女には中出し出来ないその欲求を俺にぶつけて。
「必要ない」と言われることにおびえている。




「桐生!今日暇か?久々に遊ばない?」
「あぁ、行く」

夏休みほとんど一緒につるんでた奴らからは付き合いが悪くなった、なんて言われていたところだった。

そうだ、俺の中心に秋吉が存在するから。

友達よりも秋吉に会うことを優先していたから。


友達の自転車の後ろに乗せてもらい、家に遊びに行く。ゲームしたり、こないだの合コンの話しを聞かせてもらったり。秋吉のことを考えない時間がすごく楽だった。久々に高校生らしい自分が居た。

秋吉と居る時の俺は背伸びをしているのかもしれない。



友達の家から帰る時に、駅前を歩きながら秋吉と出会った時のことを思い返していた。
時間も早いし、季節も違うけれど。
社会人である秋吉は、俺と居て楽しいのだろうか。


駅前の信号待ちで、少し寒くなった季節の空を仰ぎ、結局1人になった途端に思うのは秋吉のことばかり。

信号が変わり、人ごみの動きに紛れて、歩く。

何気に顔を上げたところに秋吉が居た。

思わず、立ち止まり、秋吉を見つめた。


秋吉は気付かない


会社も駅周辺だと言っていたから、仕事かもしれない。
ビルから出たところをなにやらポケットをまさぐっていて。
目の前の営業車らしい車を開け、後部座席に荷物を放り投げると、その後ろから来た女性に声を掛けた。

キャリアウーマン、そんな感じの女性は書類を秋吉に見せて何か数回会話をして、笑う秋吉。
女性は秋吉が開けた助手席に乗り込むと、秋吉は運転席に回り、しばらくして車は走り出した。


秋吉は俺に気付かない


制服でたたずむ自分が滑稽だった
背伸びをした所で変えられないのに
頑張った所で近づけないのに


やっと動いた足で向かった先は秋吉のマンション。
会えないと言われたのに、暴走する自分を抑える事もせず、秋吉の家の鍵を取り出してマンションに入っていく。

制服で来たのはあの無理して会ってもらったときだけ。
もしかしたら制服を着ていたから、触れてもらえなかったのかもしれない。
今日も、きっと。


静まり返った部屋で、テレビも付けず秋吉の帰りを待つ。


いつの間にか寝ていて、ふと目が覚めれば午前3時。秋吉は帰って来ない。


ソファに座り、目を瞑りまた浅い眠りに付く事を繰り返した。けど朝になっても秋吉は帰って来なかった。



「馬鹿みたいだ」


勝手に押しかけて
勝手に帰宅を待って
勝手に落ち込んで


秋吉は知る由もない



夢中になってるのは俺だけ
向こうは遊び

なら

俺も割り切った付き合いをするだけだろう?



家の鍵を閉め、学校へ向かった。





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