sunny place | ナノ



sunny place
07





――――あれから

秋吉に抱かれてから一週間が経った


服を取りに行こう、と何度も思ったり
バイトの帰りに秋吉のマンションへ寄ろうかと考えたり・・・なんだかんだで一週間。

いい加減服も返して欲しいけど、冷静に考えたらどんな顔して会ったら良いのか判らなくて時間がどんどん過ぎていった。
それに相手は仕事をしている身だ、マンション前で待ちぼうけを食らうのも、仕事のストレスをぶつけられる・・・かどうかは判らないけど、そんなもので冷たくあしらわれるのもイヤだな、と思ったりして。

まぁ、そう思うのは常連の客が仕事のストレスで日々機嫌が違うのを見ているせいでもあるんだけど・・・。


このまま知らぬ振りして他人に戻っても良いが、何せ俺の服が相手の所にあるのだ意を決して、今。


秋吉のマンション前に立っている・・・


バイトが終わってから来たから時刻は0時を回った所。秋吉は帰っているだろうか、それとも週末で飲みだったりして家にはいないか・・・。

「まぁ、出直せばいいか。」


部屋の番号を押し、呼び出しボタンを押す。

しばらくして、聞こえてきた秋吉の声。

『はい・・・・・・廉?』

相手はカメラで俺の事を見てるんだと思うと、視線をそのカメラに向けるべきか逸らすべきかと変に落ち着かない。

「・・・・服、取りに来た」

『あぁ、上がってくれ』

プツリ、と音を立てて切れた後に奥の自動ドアが開いた。

エレベーターで上がって、秋吉の部屋の前。
今更ためらうのもなんだから、勢いでインターホンを押した。

即、開いた扉。

引き込まれる俺。


「ちょっ!」

「やっと、来た・・・・。廉」

慌てる俺とは逆に落ち着いた声が玄関に響いた。

成すがまま、秋吉に抱きしめられ、密着した体で俺の耳元に唇を落としてくる。

「・・・何やってんだよっ、いきなり」

「いきなりも何も、一週間も経ってるぞ、求めちゃ悪いか」

なんだ、そのセリフは。

俺はお前の何なんだ。

「ちょっと待て。俺は服を取りに来ただけだ。」
「だな。」

「求められる意味、わかんないんだけど」
「廉は俺を求めないのか?」

「はい?」
「まぁいい、入れば?」

やっと開放された俺の体。


と思ったのに・・・


俺が靴を脱いで、家に上がって秋吉の隣を通り過ぎようとしたその時、また秋吉に捕まった。


ドン、と壁に打ち付けられる俺の背中。


直後降ってきた秋吉の唇。


その唇の動きが一週間前の事を思い出させて、秋吉の目が、俺を求めているのだと言っていた。



・・・・ヤバイ、また流されそう・・・












で、結局流された俺って・・・。


玄関でやるってどうなの。
背中痛いし。

俺って秋吉のなんなの。


って、聞けない・・・・。


遊びだなんて言われたら、きっと耐えられそうにないから。

秋吉のことを思ってるとか別で・・・男として、だ。
何のために体を差し出したんだ、なんて自己嫌悪に陥りそう。

かといって秋吉にそれ以上の感情があるとも思えない。


だからこそ・・・聞けない。


「大丈夫か、廉」


ベッドに沈んで、悶々とそんな事を考えていたらグラスにお茶を入れて秋吉が戻ってきた。

うん、玄関の後ベッドに連れ込まれて、また・・・したわけで。


「お茶?」
「あぁ。」


冷えた麦茶

それは俺用に?


言いたい事、聞きたいことたくさんあるのに
ひとつとして言葉に出せていない・・・


「今日、泊まるか?」
「・・・・仕事は?」
「明日は休みだ」

「・・・・。・・・・帰る。」

「そうか、明日空いてるか?また、食事でもしよう」

「うん」


そう言って、グラスを見つめる俺の横に差し出された物。


「か・・・ぎ?」

光るそれは紛れも無い鍵。
なんの、どこの?と聞くまでもなく、きっとこの部屋の鍵。

「明日も来てくれ。インターホン押さなくて良いから」


恐る恐る差し出した手の上に乗せられた鍵は重かった。





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