sunny place | ナノ



sunny place
06






「ん・・・」

眩しさで目を覚ました。

目を開ければ見たことの無い天井といつもと違う布団の心地に慌てて起き上がった。


「――――っう・・・」

鈍痛の走る下半身に青ざめた。
一瞬で思い出された昨日の行為。

記憶はある、が曖昧で、霞んだように・・・まるで夢だったかのようなその行為。

痛みだけが現実の物だった。


「マジ・・・か」


痛かった・・・・よ、な。
でもそれだけじゃなかったのも本当。

声を出さないようにと必死だった、痛みをこらえる事に必死。でも徐々に快感に似た何かが沸いてきたのは・・・体が受け入れる事に慣れたせいなのか。
最後はほとんど覚えていない。
自分は吐精したのか、秋吉は吐精したのか・・・

「・・・記憶に無い」

いや、最後の体を駆け巡った快感は、自分が達した証拠。

その後・・・どうなったんだ?

自分の体を見下ろせば胸元に散る赤い痕

カッと体温が上がった。


下着もつけていない、とりあえず、掛かっていたシーツを体に撒きつけ、なんとか痛む腰を支えつつベッドから降りた。

何とか扉までたどり着いて、扉を開けると
ソファに座りテレビを見ている秋吉の背中が見えた。

扉の音に気付いたのか振り向いた秋吉が立ち上がりこちらへ寄って来る。

「大丈夫か」

「っ、だ、いじょうぶじゃ、ない。」

申し訳なさそうに、でも面白そうに笑う秋吉に胸が跳ねた。昨日とはまた違う、優しそうなその笑顔。

俺の手を引き、ソファに座らせるとトーストと紅茶が出てきた。

「腹減ってるだろ?」
「あ、あぁ・・・」

とは言ってももう昼過ぎ。
昼食にしては軽すぎるが、今の俺にはちょうど良かった。

「俺も寝すぎた。服はさっき干したところだ・・・この後、ちょっと出かけないか?」

「へ?・・・あ、まぁ良いけど・・・・あんま動けそうにない。」
「あぁ、車を出すよ。」


ゆっくり、ゆっくりパンを噛み砕いては紅茶で流し込んだ。シーツに包まったままの俺を見て、秋吉は昨日のジャージと新しいパンツを俺の横に置いた。

ジャージで出かけるのか・・・


全てを胃に入れ、着替えた所で顔を洗い、秋吉に連れられるまま家を出て車に乗り込んだ。


「どこ、行くの?」

「ん、あぁそうだな。ちょっとドライブして、夕食でも奢るよ。・・・お詫びに。」


お詫び、ね。


思い出すたびに恥ずかしくて仕方ない。
初めての体験、しかも会ったばかりの男とだ・・・考えるだけでありえない、と自分でも思う。

そしてノコノコとこうやって車に乗り込んでいる時点でもう俺はどこか麻痺しているのかもしれない・・・。


「つーか、俺この格好で食事!?」
「あぁ、もちろん服買ってやるよ」


そんな簡単に服買ってやるとか言っちゃうあたり、大人って感じがにじみ出ている。

俺なんて、服ひとつ、靴ひとつ買うのに金貯めたりとか…やってたのに・・・


「買ってもらっちゃって良いの」

「いいよ、その格好で食事も可哀想だしな。それに女にねだられるカバンよりも安いだろ」


ぐわっ!出た、モテる男の発言。


「・・・そーっすか」


欲しい服あるのかと聞かれ、こうなりゃ高いの、と思って普段から通っていた店へ行く。

前から欲しかったシャツとデニムを買ってもらった。おまけにこれも似合いそうだ、なんて持ってきた、なかなか自分じゃ選ばなさそうなカットソーとカーディガンのセットまで購入してくれた。

何度もお礼を言うも「安いもんだ」なんて言われればそれ以上言えなくて。

店でジャージから秋吉の選んだ服に着替えて、また車で移動した。


「夕食には早すぎるな、どこか行きたいところないか?」

「・・・・特には、つうか車とかあんま乗らないしどうして良いかわからない・・・」

「そう、か。じゃぁ女が喜びそうなところで良いか?」

「・・・・任せる」


秋吉の口から発せられる女の存在。

きっと1人じゃないんだろうな。

なんとも言えない苦い気分になるのは一体何なのか。
一度体を重ねたからといって情が湧くのか


中身なんて無い、今ここにあるのは体の関係だけだ。



着いた場所はベタに夜景の綺麗な山の中腹。
ちょうど日の沈んだ所だった。

「もう少ししたら食事にしよう。上がった所にレストランがあるんだ」

「・・・・うん」


秋吉はよく女をここに連れてきてはそのレストランに食事へ誘うのか。そして、その後―――・・・


「どうした」

「え、あ。・・・なんでも」

下半身のダルイ俺を気遣って、車内から見下ろす夜景。綺麗であるはずのその景色に感動は半分ほどしか沸かなかった。


 眼鏡の奥の瞳に吸い込まれるんだ


目を瞑れば、秋吉の熱を持った鋭い目が思い出されて、体の芯が・・・・


「飯、食べれそうか?」


「・・・あぁ。腹減った!早く行こう」


キュ、と膝の上の手を握った。





レストランで食事を済ませると、山を降りた。
家を聞かれ、そのまま車で送られる。


「あ、待ってよ、俺の服・・・」

「また取りに来い。明日とは言わない、でも・・・必ずだ。」


「・・・・わかった」


前を見たまま運転する秋吉の心なんて全く見えない、判らない。

明日も仕事で早いから俺をさっさと送り届けたいのだろうか。必ず来い、と言うその言葉に裏なんてないのか。


家の少し手前のところで車はハザードをたいて停車した。


「廉」


今日になって、始めて名前を呼ばれて
その呼びかけが昨日の行為と同じ優しさを含んでいた。

「昨日は・・・・面白がって、からかうつもりで廉を襲ったのに・・・・本気になったのは俺だった。体を辛くさせたことは謝るけど、行為自体は後悔していないし、むしろ俺の意思だった。」


「・・・・」


それは、どう言う意味?

俺を抱いたのは秋吉の、意思?



狭い車内で、近づく秋吉の瞳から目を離すことが出来なかった。

暗闇の中でうっすらと眼鏡に反射して写った俺が、静かに目を閉じた。





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