sunny place | ナノ



sunny place
03






「・・・・くつろいでるな」

「あ」

TVに夢中になり、扉が開いた事なんか気付きもしなかった。顔を上げれば風呂上りの男性。

「まぁ、いいけど。」

「ビールばっかりだった。冷蔵庫。お茶くらいないの?」
「ある。・・・が、俺はいつでも熱い緑茶派なんだ。お茶を飲むのなら冷蔵庫じゃなくて棚。」

「えぇ、こんな暑い日にそんなの飲めねぇよ」
「案外いける」

そう言って風呂上りのその足で冷蔵庫に向かい、冷えたビールを手に戻ってきた。
ソファに座るとプシュ、っと心地良い音を出して栓が開いた。勢いよく喉を通っているのが判る。
何だっけ、ビールは喉で飲め?

「酒、いいのか?高校生」
「・・・仕方ない、飲む物無かったし。ってかなんで高校生って?」
「まぁ、見れば判るだろ。中学生にしては大人びてて、大学生にしては子供っぽすぎる」
「あそ。」

「―・・・。酔ってるのか?」
「え?」
「耳が赤い」

そう言って触れた男性の指はビールの缶で冷えて、冷たかった。

「あー、そんなに弱くないけど、強くもない。」

「泊まっていくのか」
「うん。だって俺被害者だし。」
「開き直ったな」
「だって、あれはないだろ」
「確かに。」

思い出して笑う男性。

「いや、笑い事じゃないから」

「あぁ、悪い。ってか今日会ったばかりの人の家に泊まるとか大丈夫なのか?」

「男だし、いいんじゃない?」

「そんな無用心な。」

「えぇ、だって何が起こるの?俺殴られたりするわけ?」

「それは無いけど・・・・襲われたり、とか。」

「えぇ!それこそないだろ!俺そんな気ないし」

「お前に無くても俺にあったら?」

「マジ?」

一瞬で青くなった俺を見て笑い転げる男性。

「笑ってんなよ!」

グビッと残っていたカクテルを飲み干した。
悪い冗談――――・・・


「試してみる?」

「・・・・はい?」


そう言って、男性がソファから降りた。


「え、待って、何?」
「何って。あまりにも無防備すぎて誘ってんのかと。」

「や、誘ってないし、俺被害者だし!って、待って!そっちの気無いって!!」

触れる、その手に鳥肌が立った。
触り方なのか、気持悪さからなのか。

「俺はまぁ。なんつうかどっちでもいけるから問題ない。」
「ちょ、問題大アリだっ!」

「・・・・今日は飲みすぎたかな。」
「だっ、そうだ!きっとそう!だから寝ろ!」
「一緒に?」
「わぁ、なんでそうなる!?」

頬を撫でる手のひらを慌てて振り払う。

「俺、性欲処理には困ってないって!」
「もちろん俺だって。女に困った事はない」

「う・・・わぁ、嫌な社会人・・・」
「モテる、と言ってくれ」

じりじりと寄って来る男性に距離をとって下がっていたら壁にぶつかった。逃げ道を失ってパニック。次ぎ来たら蹴り上げてやる・・・とか何とか必死で抵抗する術に考えを巡らせる。

「名前は?」
「へ?」
「高校生、名前はなんて言うの」

「・・・・レン。桐生、廉(キリュウ レン)」

「そうか、・・・廉、無防備な姿で居るお前が悪いと思わないか?」
「はっ!?いやいやいや、男同士ならこんなもんじゃねぇの。夏だし、パンイチとか、当たり前・・・」

「まぁ、普通の男同士、ならな。」
「―――っ、あんたがバイだなんてしらねーもん!」

「秋吉 憲司(アキヨシ ケンジ)。“あんた”じゃないよ。」

迫る男の、いや秋吉の眼鏡の奥の目に引き込まれた。

モテる・・・ってのは、わかるかも、知れない・・・

この目で、この目線でどれだけの女が釣れたんだろうか。そんな俺も釣られるのだろうか?

「やいやいやいや、釣られるとか・・・」

「何を言ってるんだ、廉」


「わぁ!」

秋吉の指が、俺の乳首を掠めた。
女じゃねぇ!代わりとかゴメンだ。

「待て、マテ、抱かれる気は無い、女に頼め」
「女ばかりじゃ飽きる」
「ひっでぇ・・・」

「じゃ、キスだけ。」

そう言って指が顎に触れ、そのまま少し下げられ微かに開いた口。

なぜか、俺は掘られる事と、キスを天秤に掛けていた。思えば天秤に掛ける事自体、間違っているのにだ。キスで済むのなら、と一瞬思ってしまっていたのだ。

触れた指を払うことも、近づく秋吉の顔を嫌がることも全くしなかった。

男同士でキスとか、ない。
でも、酔ってたらアリなのかも?って考えてみたりして。

これは酔っ払い同士のじゃれ合いだ。


触れた秋吉の唇は熱かった
すぐに離れていくだろうと思っていたそれは長く重ねられていた。
目を閉じ、秋吉が離れるのを待つ。
少し動いた秋吉の唇から、俺の口内へ

舌がぬるりと入り込んできて、慌てた。

触れるだけだろうと思い込んでいたのは俺、すぐに去っていくと勝手に推測してたのも俺。

両手で秋吉を跳ね除けようと手を出すも、俺の太ももの上に乗り、手を床に固定されて身動きひとつ取れなかった。

遠慮がちに入り込んでいた舌は、俺の抵抗をきっかけに激しく動き始めた。






prevbacknext




[≪novel]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -