sunny place | ナノ



sunny place
02





連れてこられたのはひとつの階に3世帯しか入っていない、6階建ての細長いマンション。
駅前だから、こんな家が多い。
入り口はちゃんとしたセキュリティの付いたオートロック

社会人、って良い生活できるんだな。

家に通されて、ドキドキしながら入る。
だって、知らない人の家だ、ましてやさっき会ったばかりの奴。
のこのこ付いてくるのもなんだけど、何かあったら殴って出れば良い、それにこの姿で歩きたくなんて無かったし。

「ここ、風呂だから。脱いだ服は洗面台に置いといて。すすいで洗濯するから。」

「はぁ・・・」

家の割には洗濯機が小さくて、洗面台に置かれている歯ブラシや小物が男性のものだけ、タオル類なんかも最小限しかない。
ひょっとしたら、いやひょっとしなくても1人暮らし・・・

いいなぁ、1人暮らしでこんな家に住めたら・・・

なんてぶつぶつ思いながらシャワーを借りる。


体を洗っていると、扉に人影、小さく戸を叩かれ声を掛けられる。

「これ、デニム洗っても良いか?」
「え!?ズボンも汚れてンの!?」
「あぁ、残念ながら・・・」

「あー・・・はい、お願いします」

ほんと、あのスガって野郎・・・
なんだったら服弁償してもらえばよかった。
ってかこの男性に立て替えてもらうか・・・

Tシャツも、バイトして買ったばかりのものだった。
洗濯されたらそりゃ綺麗だけど・・・
さすがに言ったらお金もらえるんじゃないの?なんて考えてみたり。

必死になって汚れた体を洗い、風呂を出てタオルを勝手に借りる。ゴウンゴウン、と洗濯機が回っていた。・・・と、そこで下着がないことに気付く。下着まで洗われているのか。

仕方ないのでタオルを腰に巻いて外に出て、リビングに顔を向けるとソファに座りテレビを眺めているその男性。

「下着・・・貸してほしいんだけど」

「あ、あぁ上がったのか・・・悪い、用意し忘れてた」

そう言って廊下を玄関の方へ歩いて、玄関横の扉に入っていった。
ソファに座り、テーブルを見ればビールとつまみ。
社会人ってのは飲みから帰ってきてからもまだ飲むのか・・・。

「これで良いかな?」

そう言って戻ってきた男性に渡されたのは下ろし立てらしきパンツ。

「一応パンツは新しい。服はどうかな、サイズが合わないかもしれないからジャージにした。いけるか?」
「洗濯してる服、乾かないかな?」
「まさか、乾燥機なんて付いてないぞ」
「そう・・・」
「明日取りに来れば良い・・・面倒くさいか?」
「そうじゃないけどさ・・・」

もそもそと腰に巻いたタオルからパンツに履き替える。

「髪、しっかり乾かせ。ソファが濡れてる・・・」
「あー・・・、悪い。」

慌ててソファから立ち上がり、さっきまで腰に巻いてたタオルで頭を抑えた。

「―・・・。・・・まぁ、アレだ、面倒なら泊まっても良いけど。遅いし、好きにすれば良い。ジャージ、ここに置いておくから着て帰るなら帰れ。」

俺はもう風呂へ行くから。そう言ってリビングから姿を消した。

「どうすっかな」

タオルをガシガシと頭に当てて水分をふき取る。
時刻は1時を過ぎたところ。正直家に帰るのが面倒くさい。かといって知らない人の家に泊まるのも気が引ける。
パンツ姿でソファには座らず、テーブル前に腰掛ける。目の前にあるつまみに手を出し、テレビを眺めた。

あー泊まるかな。
いやーでもこんな適当でいいのか。

まぁ。・・・男だし、な。

それになんか悪い奴じゃ・・・なさそうな気が。

あくまで“直感”だけど。

ってか、俺被害者だし。態度でかくても大丈夫だろ?

そう、腹をくくって冷蔵庫に手を掛けた。
入っているのはアルコールばかり。

「お茶くらい置いとけよ・・・」

がさがさと物色してもジュースの一本も見当たらない。出来るだけジュースに近いカクテル系を、アルコール分の少ないパーセントの物を探し手に取る。

「・・・・ってかレモンばっか?本気で飲む人だな。」

唯一あったオレンジのカクテルを取り出した。
それと隅にあったチーズなんかも取り出し冷蔵庫を閉めた。

1人暮らしって、こんな感じなのか?なんだか楽しい・・・


テーブルに取り出した物を並べて、カクテルの缶のプルを開けた。





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