sunny place | ナノ
sunny place
01
後悔してると聞かれれば
きっと後悔しているんだろう
“良い経験させてもらったよ”
そう心の中で言ってやった
なのにいつまで経っても―――・・・
◇
「廉(レン)今日どうすっか」
「あ〜今日は帰るかな、休み入ってずっと帰ってないし。いい加減、布団で寝たい。」
「そう?じゃまた明日にでも・・・」
「って、即明日もかよ」
「いいじゃん、暇だろ?」
「まぁ・・・な」
高校に上がってすぐの夏休み。
これまでの中学校とは違って、少し大人になった気分になって、バイトも始めて自由なお金が手に入り、調子乗って連日夜遊び。
友達のトコに泊まってはソファーに寝かされて体もダルイ。
元から俺に対しては放任主義の親。
とがめる事もなければ、帰って来てないって・・・気付いてるのかどうかも怪しい。
結構田舎っぽい町並みだけどやっぱり駅前はそこそこにぎわっていて、大きなお店は無いけど企業戦士の憩いの場・・・飲み屋は山のようにある。
そんな俺も短期バイトで雇ってもらったりしてる。
ジメジメと会社の愚痴を部下に言ってるおっさんとか、あまり気持良いもんじゃないけど、こんなところでしか吐く事が出来ないんだな、って思えるようになってきた。
酔っ払いの被害を受けるのも店員だったりする。こないだは「一気しろ」としつこく言われて良い迷惑だった。
友達の家は結構離れた所にあって、そこから駅前を通り抜けて自宅へと帰る。
ベッタリと張り付くような夏の暑い空気。
そりゃおっさん達もビール飲みたくて仕方ないよな、何が旨いのか全くわからないけど。
南北に一本大きめの道があって
それをずっと北へ上がっていくと通い始めた高校がある。友達の家からその道を歩いて、踏切を渡り駅を超えて、3本目の路地を曲がって、そこからまだしばらく歩いてやっと自宅。結構かかる。
自転車で出かけたのに、何人か居た友達の1人が乗って帰ってしまって歩いて帰る羽目に。
夏の夜は嫌いじゃない。
日中は外に出るのも嫌なくらいだからか、結構夏の夜は外に出ている事が多い。
駅周辺の居酒屋から出て、店の前で輪になって何か話してる社会人や大学生らしき人たち
自分も何年後かはその中にいるのだろうか。
角を曲がって少し細い道に入っても、同じような光景が続いていた。
人の多さで狭くなった道を出来るだけぶつからないようにと身を細めて通り抜けていく。
そうやって、こっちが気を使ってるのに
酔っ払いってのはお構い無しなんだ。
「ほら、邪魔してる!お前ら退け」
「あ〜ごっめんねぇ〜」
だから、声とか掛けないでくれ。
出来るだけ早足でその場を通り抜けようとした時に気の大きくなった、気分のよろしい酔っ払いに絡まれた。
事もあろうか、後ろから羽交い絞め。
―――ど、どういうこと・・・
「えっへへ〜」
「須賀(スガ)!この酔っ払いっ!早くその青年離してやれ!」
「きゃー須賀さんやっぱりそっち系なのぉ!?」
面白がる奴半分、注意する奴半分。
ってか、誰も引き剥がしに来ないって、どうなってんだよ!
「ちょ、っと、やめてください!!!!」
身を振り、そのスガ、と呼ばれた男性を引き剥がそうとするけど、どうやら相当飲んでいるらしく、だらんと圧し掛かられて重さで倒れこみそうになった。
「わぁ!」
「・・・っと」
顔面から倒れこむかという所で、周りに居た1人の眼鏡を掛けた男性が俺を・・・いや俺と俺に乗ってるスガって奴を支えた。
助かった、とホッとした瞬間に・・・
「あー・・・吐く。」
後ろから、そんな声が聞こえた後に、一枚で着ていたTシャツから不快な温もりが肌に伝わった・・・
「―――――」
なんていうか、自分で吐いてもあんまりかぶらないよ?
なのに、なんでこんなオッサンの・・・・
あまりのショックに声も出ない。
背中で、良かった・・・って全然よくねぇ!
「・・・・最悪、須賀、最悪・・・」
俺を支えてくれてた男性も、戸惑っていた。
「ちょっとお前ら、須賀を何とかしろ!」
そういわれて傍観していたやつらがやっと動き出した。口々に聞こえる俺に対する心配や謝罪や・・・って早くあんたらが剥がしてくれてたらこんなことには―――
「俺の家、すぐそこだから来る?風呂と服、貸すよ」
俺を支えていた男性が申し訳なさそうにそう言った。
それが、この男性と俺の関係の始まりだった。
prev|back|next
[≪
novel]