浮気遊戯


お前じゃなきゃ、ダメなんだ。
お前しか、いないんだ。
お前だけを、愛してるんだ。

壊れたテープのようにそればかりを繰り返す目の前の男に、もう溜息すら出てこない。中身など存在しないと端から解りきっている言葉では全く心に響かず、逆にどんどん気持ちを白けさしていく。
どうやら今日は、浮気をした男とその恋人、という設定のようだ。

(いい加減、このやり取りにも飽きてきたんだけど)

そう思いながら、足元で許しを請い続けている男に視線をやると、恍惚とした目とぶつかった。罰されることを待っている、そんな目をした男にほとほと呆れてしまう。

「最悪だ」

ぽつりと呟いた言葉に一応怯えた体を見せるものの、目は口ほどにものを言う。期待に満ち溢れた目が、すべてを物語っている。

(とんだ茶番だな、くだらない)

そう思いながらもこういったお遊びに毎回付き合ってしまうのは、なぜだろうか。

(……どうでもいいかそんなこと。面倒くさい)

もやもやとした気持ちには蓋をして、早々に考えることを放棄する。面倒などごめんだ、死んでも関わりたくない。
沈み込みそうになる考えを振り切るかのように、僕はこれまたお決まりのパターンと化した言葉をかけた。

「悪い子には、お仕置きが必要だね」

こうして今日もまた、歪んだ僕たちの馬鹿らしいお遊びが始まる――。


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