嘘つき


俺だけだって、言ったのに。
俺が一番だって、言ったのに。
約束、したのに。

「…裏切り者。嘘つき」

ベッドで知らない人間と、気持ちよさそうに眠っている最愛の男に向かってそっと呟く。このベッドは二人で選んだ。それなのに、最近は自分よりも他人が使っていることの方が多い。
俺は、右手に持ったペンチをぐっと握りしめた。

「嘘つきは舌を抜かれるんだ……。君がいけないんだよ?これは、お仕置き、だから」

窓から差し込む月の光に照らされて、鉄製のペンチがギラリと鈍い光を放つ。

「大好きだよ、大好き。愛してる。だから、俺だけのものでいて……」

祈りのような言葉は誰に聞かれることもなく、部屋に溶け込んでいった――。

果たしてこの願いが叶ったのか。
知っているのは月と、鉄製のペンチ。この二つのみ。


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