「俺の教科書…。結局どうすっか」 一人、精神的にも肉体的にも取り残された教室で、ぼんやりと呟いた言葉は頼りなく空気に溶け込んでいく。 「はあ、……帰ろう」 考えても虚しくなるだけだ、と振り切るように立ち上がると、強かに打ち付けた背中がジクジクとした痛みを訴え始めた。 「ってぇ、」 ――もしかしたら痣になっているかもしれない。あの憎き谷口のせいでっ…。 新たに湧き上がってくる怒りを抑えながら、林田は鼻息荒く再び家に帰るため足を動かし始めた。 3←prev main top