ノンケ×俺様健気


最近の俺は、自分で言うのもなんだが、ものすごくイライラしている。それはもう、いつも能天気な友人がカラかってこないぐらいに。理由はわかりきっているんだが、そのことがより一層自身を苛立たせる原因となる。
その苛立ちをぶつけるかのように、俺は昼飯にと買った購買の焼きそばパンに食らいついた。

「最近、榎本どうしたんだろうねえ」

友人のその言葉に、つい持っていたパンを握りつぶしてしまう。袋の中で中身をぶちまけて拉げているパン、というものはなかなかにグロテスクだ。
食べる気力を失い、無残な姿になってしまったパンを投げ捨てるかのように机に置く。濃すぎる味付けにもたつく口の中をすっきりさせようと烏龍茶に手を伸ばすと、再び友人から控えめな声がかかった。

「石倉、お前榎本に振られたの?」
「はあ゛!?」

想定外の言葉に、叫び声に似たものが口をついて出てくる。まだ飲み物を口にしていなくてよかった。飲んでいたら絶対に噴出していただろう。

「お前、いきなり何意味わかんねえこといってんだよ」
「……だってさあ、あれから榎本ぱったり弁当持ってこなくなったじゃん」

その言葉に俺はチッと舌打ちをした。
そう、あれから。榎本がこいつの腕を叩き落とし、意味不明な言葉を残していった、あの次の日から、榎本が弁当を押し付けてこない。
最初は、寝坊かなんかで作ってこれなかったのか、と思った。が、それが2日、3日、と続き、最終的に、榎本は俺を見る度そそくさと逃げていくようにまでなった。

「あ゛ぁ゛。思い出すだけでもムカつく」

本当に、ムカつく。榎本が俺を避けるようになったことも。その理由を、すべて理解しているような友人にも。そして何よりも、そんな状況に少なからずショックを受けている自分自身に。
もう一度舌を打つと、友人が呆れたような声で呟いた。

「最近、舌打ちしすぎだよ。もういい加減、認めらいいのに」
「認めるって何をだよ」
「そんなこと、もうわかってんじゃないの」

むっつりと黙ってしまった俺に、友人ははあ、と大きな溜息をついた。

「これはあくまでも独り言なんだけど、」

こいつは偶に、突然意味の分からないことを言い出す。話しかけようとすると、「黙って聞け」と黙殺されてしまった。


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