Happy Helloween


ぶーぶーと文句を言いながらも嬉しそうにしている毛利にこちらまで嬉しくなってきた。――やはり、コイツには笑っている顔の方が似合う。
漠然と浮かんだ思考に、肇は苦笑した。

「どうしたの、センセ?」

覗き込むように聞いてくる毛利に「別に」と返して、耳元で囁いてやる。

「ハッピーハロウィン」

ばっと耳を抑えて赤くなる毛利を猫のようにつまみ、玄関まで連れて行った。放心しているのか、抵抗することもないのですんなりと運ぶことができる。

「つうわけで、お前の用は済んだな。んじゃ、また明日学校で」

ぽいっと放り出すと、玄関の向こうから酷いだの狡いだの聞こえてくるが、無視をして鍵を閉めた。偶にはこちらが主導権を握ってもかまわないだろう。
部屋に戻ろうと踵を返すと、柱の陰からじっとりと睨む目と視線がぶつかった。

「私は認めないからね」

そう残して芽子は再び奥へと戻っていく。肇はこれから毛利に及ぶであろう苦労を思い、肩を竦めた。


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