Happy Helloween


「えっ、ほんとう?」
「おう。でも母さんに怒られるから食い過ぎんなよ」

「はーい」といい返事をしてから台所へと駆けていく芽子を見送り、毛利へ向き直る。

「で?どうしたんだよ」

そう言うと、毛利は目を見開いて「何で?」と聞いてきた。

「あのなあ、俺はお前の担任だぞ。なんかあったってことくらいお前の顔見りゃわかんだよ」
「でも、」

言いよどむ毛利に溜め息をつきながら頭を撫でてやる。

「どうせ、芽子からなんか言われたんだろ。俺に近付くな、みたいなこと」
「なんで分かんの!?」

いった後にしまった、と顔をしかめる毛利に、なるべく柔らかい笑顔を向けた。

「そりゃあな。親権がないとはいえ、俺は歴とした芽子の父親だし。で?」
「で、って?」

意味が分からないと眉をしかめる毛利に、肇はさっきと打って変わって意地の悪い笑みを浮かべる。

「で、俺のこと、諦めんのか?」
「なわけないし!俺、何があっても一生センセのこと好きだよ!」

少しからかってやるかとしてみた質問にそう勢いよく答えられて、つい「お、おう」とどもってしまった。ふーっふーっと息巻く毛利に落ち着くよう声をかける。
どさっと一人掛けソファに腰掛け深呼吸をする毛利に、ほらっと手に持っていたものを投げ渡した。

「えっちょ、何」

突然のことに混乱しながらも、毛利はなんとかキャッチしたようだ。

「センセ、これ…」
「ハロウィン、だからな。トリックオアトリートつったのはお前だろうが」
「でも、これって。っもうセンセ大好き!」

手の中に収まっているもの、クッキーを見て飛びかかろうとしてくるのを軽くかわす。男子高校生に飛び掛かられなんてしたら、もう受け止めきれない、年齢的に。

「もう、何で逃げんの」



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