Happy Helloween


肇は慌てて台所へと走る。そうだ、クッキー。一緒に作ろうと強請る芽子に推し負けて、丁度焼いている途中だった。オーブンを開いて中を見てみると、所々焦げてしまってはいるが、一応無事だといえるだろう。肇はほっと胸を撫で下ろした。

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その頃、毛利は取り残された部屋で何とも気まずい思いをしていた。

「あの、えっと。お嬢ちゃんはお名前なんていうの?」

くりっとした大きな目でぎっと睨んでくる芽子に、やっとのことで声をかける。普段はどちらかというと子供には好かれる方で、こんな時どう対応すればよいのか皆目検討が付かない。

「めいこ」

ポツリと呟かれた名前に、「そっか芽子チャンっていうんだね」と笑顔を浮かべる。が、「やめて」と冷たい声で返されギクリと身を強張らせた。

「芽子チャン、だなんて馴れ馴れしく呼ばないでよ。私は、あんたがハジメちゃんのコイビトだなんて認めないんだから!」
「えっ?えっ?」

告げられた言葉がうまく呑み込めなくて、毛利はただただ疑問符を投げ掛けることしか出来ない。

「もう、分かんないかな!あんたみたいな、頭悪そうなスッカラカンにハジメちゃんは渡せないって言ってるの!」

センセの子供は確か9歳だったはずだ。最近の子供はマセてるとよく言うが、よもやここまでとは。キャンキャンと文句を連ねる芽子に、毛利は遠い目をする事しかできなかった。

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「悪い、待たせたな」

初対面の二人を残して来てしまったことに申し訳なさを感じながら肇が部屋に戻ると、そこには何ともいえない空気が流れている。

「どうかしたか」

二人に問いかけると、芽子がすかさず「何でもないよ」と答えてきた。毛利に目をやると、「うん、何もないよ」と死んだ魚のような目で首を振っている。そのことに多少の違和感を覚えるが、肇は無視して芽子に声をかけた。

「芽子、クッキー台所に置いてるから食っていいぞ」


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