Happy Helloween


「トリックオアトリート!!」

玄関を開けた瞬間、近所にまで響くような底抜けに明るい声に、肇は急いで扉を締めた。否、締めようとしたのだが、ガッと何かに阻まれて動かない。

「ちょっとセンセ、何で締めんの。ヒドいじゃん」
「お前は営業のセールスマンか!?その足をどけろ」

ドアが締まらない原因はこいつ、毛利だ。セールスマンよろしく足を滑り込ませ、ドアが締まるのを防いでいる。帰れ、という意を込めて睨みつけるが、毛利は気にすることなくニコニコしているばかりで動く気配が一向にない。

「ったく、こんなとこにまで何のようだ」

根負けした肇が渋々ドアを開けてやると、「おじゃましまーす」と声を上げながらズカズカと上がり込んでくる。

「おい、誰も入っていいとは言ってねえだろうが」

そんな叫びも虚しく、毛利はいとも簡単に玄関内へと侵入してきた。はあ、と溜め息をつきながらも、毛利のそんな行動を受け入れ、慣れつつある自身に何ともいえない気持ちになる。鍵を閉めてからゆっくりと振り返ると、「トリックオアトリート!!」と再びあの有名な言葉がかけられた。

「ちなみに俺はセンセにイタズラ希望でっす」

ビシッと敬礼をしながら告げられる言葉にガクッと肩の力が抜ける。

「お前、そんなことのためにわざわざ家にまで来たのか」
「そんなことじゃないですよ!俺にとっては大問題だし」
「帰れ!」

果てしなくどうでもいい内容に少し強めに答えると、ムキになって、「絶対に帰らない!」と突っかかってくる。帰れ!帰らない!と押し問答を繰り広げていたところに、「もうハジメちゃんうるさいよう。ご近所さんに怒られても知んないよ」と少しトーンの高い声が聞こえて、一瞬の沈黙が訪れる。

「う、浮気だ!肇センセがロリコンだったとか」
「んなわけあるか!」


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