図書館司書×生徒会長


「せんせ、い…」
「うん、なあに」

懐かしい、どこまでも優しくて、どこか甘い響きを含んだ聞き方に、御園は堪えることができなかった。学園の生徒会長として、誰よりも凛々しく誠実でいようと気丈に振る舞ってきたが、この人の前ではそんなものは役に立たない。次から次へと今まで溜めてきたものが溢れてきてしまう。

「俺、俺は、ただ皆の期待に応えたくて、必要とされたくて、頑張ってきたんだ。すごいね、さすがだね、って言われる度にここにいることを許されてるみたいで、うれしかった。もっと、もっと、やってやろうって思えた。でも最近、それをどうしようもなく煩わしく感じることがあって。嬉しいはずなのに、もしも失敗したらって考えたらもう止まらないんだ。俺はまたイラナイモノになるんじゃないかって、捨てられるのが怖くて」

所々相槌を打ちながら上手く話を促していく安藤に、御園はつっかえながらも全てをぶちまけた。全てを吐き出したことにより、少しだけ心が軽くなった気がする。いつの間に移動したのだろうか、隣から伸びてきた手に思わずビクついてしまう。

「本当に君は変わらないねえ」

クスリと笑われ、安藤との差を見せつけられた気分になった御園は、羞恥から顔を赤くして俯いた。

「まあ、そんなところが可愛いのだけど。考えすぎるのは君の悪い癖だよ?そんな風にしてしまってはいつかガタがきてしまう」

まるで大切な宝物を扱うように、優しい手つきで頭を撫でられる。こんなことをされるのは孤児院以来だ。そういえばあの頃は毎日のようにされていた気がする。そっと下から窺うと、蕩けるような笑みを向けられ、ガラにもなく照れてしまう。

「たまにはね、逃げることも大切だよ。人間ってのは案外頑丈だけれど、それでもやっぱり限界というものがあるんだから。だからね、逃げたくなったらいつでもここにおいで。それとも僕じゃ頼りないかい?ゆーり」

ゆーり、そう昔のように呼ばれることがこんなにも嬉しいなんて。

「……逃げても、いいのかな。逃げてしまっても俺はここにいていいのかな」


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