図書館司書×生徒会長
狭い。だが久しぶりに横になった気がする。こんなに寝たのはいつ振りだろうか。
ちょうどいい暖かさに、ついつい二度寝をしてしまいそうになる。
――ん?寝た!?
あまりの衝撃に、御園は飛び起きた。
「な、ここはどこだ。時間は。仕事。そうだ、今日までの書類が確かあったはずだ」
全く見覚えのない場所に不安だけが募っていく。とにかく自身の置かれている状況を確認しようと見まわすと、どうやら先ほど感じた狭さはソファに横になっていたからのようだ。寝ていた間にずり落ちてしまったのか、床には毛布が丸まっている。部屋にあるものは、自身が横になっていたこのソファと、執務机、それから壁一面の本棚と、それを見事に埋め尽くす夥しい数の本たち、それだけだ。
呆然と部屋を見渡していると、ガチャリとドアノブのまわる音が聞こえ御園は息をのんだ。ギギギ、と立付けが悪いのか扉はゆっくりゆっくりと開く。その隙間から漂ってくるコーヒーのいい匂いに、自然と肩の力が抜けていくのがわかった。この匂いはよく知っている。食欲を刺激されたのか、腹の虫がきゅう、とないた。
「安藤先生」
自身のよく知るその人物の名を呼ぶと、眼鏡の奥の切れ長の目を緩めて彼は笑いかけてくる。
「御園君、起きたんだね、よかった」
うんうん、と頷きながら部屋に入ってくる先生に、御園はとりあえず状況確認をするため口を開いた。
「先生、あの」
「ここは、図書準備室。朝来てみたら、君が廊下に倒れてたから運んだんだよ。少し顔色もよくなったみたいだし、とりあえずは安心かな」
まだ何も言っていないというのに、的確な答えが返ってきて呆然としてしまう。
「まだ何も言っていませんが」
「言わなくったって、今の君の顔を見れば何が言いたいのかなんてわかるよ。伊達に付き合い長くないからね、そうだろう?」
首を傾げながら聞いてくるその姿は、昔からまったく変わっていない。御園のことなど全てお見通しなのだ。そのことに安堵を感じながらも、同時に妬ましさも感じてしまう。いつだってこの人は追いつかせてくれない、雲の上の人なのだ。孤児院にいたころから、ずっと。
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