ノンケ×俺様健気


「石倉!これ今日の弁当だから。残さず食えよ」

そう言って俺に弁当を持たせ、脱兎のごとく逃げ去る榎本。俺は重量感のある重箱に目を落とし、人知れず溜息をついた。

「おうおう榎本の奴頑張るなあ。もうこれで一週間だろ」

ああもう一週間になるのか。友人のからかうようなその一言で遠い目をしてしまうのは仕方がないと思う。
榎本の意味不明な襲撃を受けてから今日でちょうど一週間が経過した。あれから毎日毎日、奴は俺に手作り弁当を押し付けて去っていく。去っていくといっても廊下からこっそりこちらを窺ってはいるのだが。そして手にしっかりと握られているメモ帳とペン。今も扉からちらちらと長身が見え隠れしている。

「まあ何にせよ早く飯食おうぜ。今日の榎本弁当は何かなあ」

友人の呑気な一言により席について榎本からもらった弁当を広げる、とそこには男子高校生が作ったとは到底思えない、彩豊かなおかずたちが綺麗に並べられていた。

「おお、すげえな」

思わず感嘆の言葉が出てしまう。それに反応するように廊下から飛んでくる花には無視を決め込み、弁当に箸をつける。

「あ、うまい」

ちょうど俺好みな味付けに舌鼓を打つと、「へえうまいんだ」とニヤニヤした声がかかった。

「んだよ、なんか文句でもあるわけ」
「べっつにい。ただ石倉が料理褒めるなんてそうそうないからさ。結構絆されてんのかなあって」
「はあ?そんなんじゃねえよ」
「…ふうん、ま、今はそれでいいんじゃない」

全てを悟っているかのような発言に、つい眉間に皺が寄ってしまう。「癖になるよ」と皺をぐりぐりと伸ばしてくる友人の好きにさせて弁当をつまんでいると、唐突にその手が叩き落とされた。何事かと見遣ると、顔を赤くして仁王立ちをしている榎本と目が合う。

「な、なに榎本」

異様な光景に声を絞り出すと、切れ長の目でギロリと睨まれた。

「お前は俺のモノになるんだから、ほかの奴に触らせてんじゃねえよ!」


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